「君に会いたくて」
何気ない、気にしなければ雲のように彼方へ流れてしまうであろうあの瞬間。その仕草も、その笑顔も、いかに儚いものかと気づくのに、あまりにも時間をかけすぎてしまったようだ。
失敗とか後悔とか、ありふれた言葉では言い表せない。ただ、愚かな自分を見つめることしかできない。そんな時をいくら過ごしただろう…
「君に会いたい…」
整然と立ち並ぶ墓石の前でポツリと呟いた。
三回目の冬だった。
「20歳」
20歳は一つの節目であると言える。これから社会に出て活躍していこうと奮起する若者の多いことだろう。
人生これからだと。
その一方で、こんなことも聞いたことがある。
20歳で人生の半分は過ぎてしまっている。
いわゆるジャネーの法則というやつだ。
0歳のときの一年間と比べると、20歳の一年間は人生の二十分の一であると。だから体感時間はどんどん短くなっていくという理論だ。その理論で行くと、体感的に、おおよそ20歳で人生の半分は過ぎてしまっているというわけだ。
20歳という節目が、門出か折り返しか。それは人生を最期まで謳歌した人にしか分からないだろう。
だが、残りの人生に、爆発的な可能性があると信じて、毎日を踏みしめるように歩けば、案外20歳ってのは、まだまだ始まったばっかりなのかもしれない。
「とりとめもない話」
あぁ、何だっけ
凄い大切なはずだったのに
断片的な記憶だけが浮いては沈む
記憶の片隅にそっとしまわれる
あなたと話したあの夢
「雪を待つ」
雪がこんなに億劫な存在になったのは、私が大人になったということなのだろうか。地面は凍って歩きにくいし、電車も遅れる。ノーマルタイヤの車は使い物にならない。
この地域で滅多に降らない雪は、子どもたちの目を輝かせる。年に数回、またとないこの機会を逃すまいと、無邪気に駆け抜ける。
億劫な気持ちの後には必ず、懐かしいあの頃の気持ちが蘇る。薄く消えかかっているあの頃の高揚感が。
周りに染まった今、何色にも染まらない雪と純粋な子供たちを、待っているのかもしれない。
「イルミネーション」
暗く静まり返った夜空を煌々と照らす光
私は見て見ぬふりをした
痛いくらいに突き刺さる光景に
私は背を向け歩いていた
春が訪れるのはまだ先のようだ