「明日世界が終わるなら」
妙に幻想的な空を眺めていた。
それは世界最後の夜という色眼鏡なのか、
それとも神様のいたずらか。
深い青というよりむしろ紫がかって見える、
淡い絵の具を滲ませたかのようだった。
戸惑う人、泣きわめく人、逃げ惑う人、絶望する人、
楽しむ人、はしゃぐ人、立ち尽くす人、楽観する人。
何もかもどうでもよかった。
もう、何もかも。
ただ座って、静かに、この空を眺めていたかった。
ただ眺めて、知りたかった。
この世界の終末を―
「優しくしないで」
優しいことがいいことかと言われると素直に頷けないのは私だけだろうか。
優しくしているからといって、それが思いやりから来ているものとは限らない。
思いやっているからこその厳しさがある。
思いやっているからこその儚さがある。
優しくすることが、あなたのためにならないことだっていくらでもある。
あなたにはそれが届いているのだろうか。
「カラフル」
虹色のキャンパスを見て思う。
私に見えている世界は君と同じなのだろうか。
人は自分の意識や記憶を客観的に証明できない。今自分が見ている赤が他の人にも同じように見えているとは限らない。そもそも違うということに気づくことすらできない。
もしかしたら、誰しも違う色の世界を見ているなんてこともあるのかもしれない。でも誰も気づかないし、誰も違和感を持たない。
そう思うと、世界はもっと面白いのかもしれない。
「特別な存在」
失ってから気づくとはよく言ったものだが、案外ちょっとしたことで気づけるのだろう。
人生で初めて一人旅をする今日、今まさに行きの特急電車の中というこのとき、久しぶりに何とも言えないこの気分を味わった。これからの旅路に期待と興奮を抑えられないようで、不安と寂しさが入り混じった感覚。いや、実際不安と寂しさが大半を占めているのだろう。小さな頃、初めて一人で出かけたあの時と同じ感覚。夢の如くすぐに消えてしまうであろうこの感覚。
住み慣れた家、毎日帰りを待っていてくれる家族。
流れる車窓から見えるあの光一つ一つにも、同じようなに家族がいて、その分だけ物語があるのだろう。
特別な存在。
彼方遠くの家族に想いを馳せる今。新たな旅路の前に、大きな一歩を踏み出したのかもしれない。
「特別な夜」
あと三分だ。
こんな年になっても、心臓の高鳴りは消えないらしい。
あと二分か。
もうプレゼントなんて何年ももらってないけど。
あと一分…
それでもやはり特別だ。
ハッピーバースデー!!!
周りにいる友達の賑やかな声が聞こえた。