【最初から決まってた】
最初から決まってた、君の隣にいるべきなのは自分では無い。
同性の自分なんて、そもそも君の眼中にはないだろうし、この気持ちを伝えたとしても君は戸惑うだけだって知っていたから…。
「ずっと親友でいようね。」
なんて嘘をついた。
この恋心を伝えて、君が遠くへ行くくらいならば、
自分の気持ちは君に伝わらなくてもいい。
叶わぬ恋を抱えながら、君の幸せをただ願おう。
幸せの鐘が鳴り響く中、
純白の衣を纏う君は今までのどんな時よりも輝いて見えた。
【失恋】
私は今失恋しそうになっている。
私は、幸せなのか分からない。
もしかしたら別れた方が幸せなのかもしれない。
けどそんなの、別れてみないと分からない。
だから怖くて今日も『好き』『大好き』を繰り返す。
最初は心からの言葉だったはずの言葉。
いざこざを繰り返すうちに、時間が経つうちに、
本当に思っている言葉なのか分からなくなってしまった。
天秤に乗せたら、今の『好き』じゃなく、初めて言った『好き』の方へきっと傾くだろう。
けれど、見た目には分からないから、
まだ大丈夫。大丈夫。
同じ『好き』『大好き』だから。
何が好き?どこが好き?なんで好き?
なんて、答えられないかもしれない。
けど、ただわかるのはずっと『好き』だったし、
きっといまも漠然と君を『好き』ということだけなのだ。
【君と出会ってから…私は】
今日も今日とて天気が良い。
陽の当たるリビングには、愛する君が寝転がっている。
本当に気持ちよさそうに寝るもんだな。
そんなこと思いながら、頭を撫でた。
しかし、反応はない、真昼間に爆睡中らしい。
よくある事だが、構ってくれないのが少しだけ悲しかったりするんだぞ。
「まあ、構ってくれないなら掃除でもしようかな。」
なんて独り言を言いながら重い腰をあげた。
もちろん君はぐっすりと寝て起きようともしない。
「まったく。出会った頃は、昼寝どころか睡眠不足でやつれてたっていうのになぁ…」
掃除機をかけ始めるとようやく君は、ムクリと起きる。
「あ、起こしちゃった?おはよ。」
そう声をかけると、「にゃぁ〜」と返事をする君。
すんごく迷惑そうな顔。全く、どこで覚えたんだか…。
まあ、関係ないから掃除機は止めないけれど。
掃除機が余程嫌いなのか、ものすごい勢いで飛びかかった君の姿を見て、2年前家の近くでボロボロになってた君を見つけた時を思い出す。
今の姿からじゃ考えられないな笑
「僕も、あの時は君と同じくらい心がボロボロで今みたいにニコニコ笑うなんて無理だったんだぞ?
けど、僕よりもっとボロボロなやつを見て僕も頑張ろう!ってなったんだぞ〜知ってたか?」
「にゃぁ。」
「そうかそうか」
君と出会ってから僕は、人間らしくなれたんだ。
そんなこと思っていたら、僕の考えがわかるのか愛する君が擦り寄ってきた。
なんだ?私もってか?笑
そうだな。僕達2人ともいい風に代わったよな。
まあ、これからもゆっくりまったり生きてこうよ。
【ありがとうを伝えたくて】
ピッ…ピッ…ピッ…
目覚めたのは、そんな音のする部屋だった。
どうしてしまったのか、真っ白な天井を見て思い出そうとする。
あの人と一緒にカフェに行って、帰りに本屋に寄りたいってわがまま言って遠回りして、大きな交差点で信号を待っていた。
彼は、いつもの笑顔で
「帰ったらアイス食べちゃおう🍦」って言ってたっけ。
私は、その言葉に「さっきカフェで食べたでしょっ?」って返したんだ。
そして…
そして私たちが青信号なって渡ろうとした時に…トラックが、ぶつかってきた…。
じゃあ彼は?彼はどこにいるんだろう。隣を見たいけれど、首が痛くて白い天井しか見れなかった。
その時、タイミングよくお母さんが病室に入ってきた。
「あなた!!意識を取り戻したわよ!!やったわ!」
今まで聞いたこともないような大きな声で騒いでいる母に、「彼はどうしたのか。」と聞こうとした。
しかし、その声は形にならなかった。
母が呼んだであろう看護師と、医者が私の元へやってきて色々な診察をしていった。難しいことばかりで何を言っているのかさっぱり分かりはしなかった。
医者は最後にただ一言「心臓があって良かった。」と言った。
質問したいが声が上手く出せず、「あ゛ぁ…うぅ…」という唸りとなり口から漏れた。
その声を聞くなり母が手を握ってくれた。良かった感覚はあるんだななんて思いながら、涙を流して喜ぶ母をただ見つめた。
診察がおわり、病室は静寂に包まれる。ただ機械だけが、ピッ…ピッ…と鳴り響いている。
そんな中、静寂を打ち消すように母が口を開いた。
「あのね。落ち着いて聞いてね。 あなたと一緒にいた、彼の事なんだけど…」
その声色は暗く、表情は苦しそうだった。
「彼は、あなたを庇うように」
ああ、そうだ。大丈夫。分かっている。何となく感じていた。医師の話や、話の雰囲気で。
「死んでしまったの。」
だから言わないで欲しかった。
辛くてたまらなかった。こんなことなら死にたかった。
「けどね、あなたの心臓は彼がくれたものなのよ。」
…なんて思ってしまうのは、良くないことなのかもしれない。彼が私のためにくれた命なんだから。
「だから、彼の分まで強く生きるのよ。」
ただ、今は泣いていたかった。
涙をずっと流していた。疲れてしまったのだろうか、気づいたら寝てしまっていた。母ももう帰ってしまったらしかった。
時計を見ると、24:05。今まで寝ていたから眠くないはずなのに、いきなり強い眠気に襲われた。
そして、夢を見た。
あの日の夢。
彼と手を繋いで歩いたあの日。
いつもの笑顔で私に笑いかける彼に、涙が止まらなくなった。夢でもいいからずっと一緒に居たいと思った。
そんな私の頬に手を置き、涙を拭いながら彼は言った。
「ほんとに泣き虫なんだから。そして、真面目。絶対に自分を責めちゃダメだよ。僕は、自分の意思で君を守ったんだから。だからさ。なんて言うのかな。その、重いかもしれないけど僕の為に生きて。お願い。」
そういい、私の胸に手を当てる。
「僕はいつでもここにいる。だから大丈夫、寂しくないよ。本当に愛してる。僕の分まで長く生きて、こっちに来る時沢山お話聞かせてね。じゃあ。またね。」
彼にただ伝えたかった。『ありがとう』って。
けどやっぱり言葉は形にならなくて…夢の中でくらい愛してると伝えたかった。そんな思いで目を覚ました。
現実でもやはり話せなくて、唸り声しか口に出ない。
リハビリをすれば言葉を話せるようになると母は言った。
彼に、『ありがとう』を 伝えるために。
彼に、『愛してる』を伝えるために。
私は今日もリハビリを続けている。