思いつきなんちゃって小話

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11/11/2025, 10:24:02 AM

【ティーカップ】

たっぷりの茶葉をティーポットに入れ、3分の時を待つ。

茶葉が溶けるように、ゆっくり飴色になっていくお湯。

砂時計の砂が落ちる間に、さあ準備を。

お気に入りのペアのティーカップ。

角砂糖のいっぱい入ったシュガーポット。

ミルクティーが好きなあなたにミルクピッチャー。

2人だけのお茶会だから、お菓子は気取らず平皿に。

砂時計が落ちきればやっと始まるティーパーティ。

窓の外を向いたままのあなたに呼びかける。

振り向かせるといい笑顔のあなたがいる。

あなたのかみに付いたホコリを払う。

あなたの隣は私の特等席だったけど、
今はあなたの顔が見たいから正面に。

カップに紅茶を注いでいく、
湯気がたちこめあなたの顔が曇る。

あなたと飲む紅茶が好きだ。
けどあなたが飲むのは邪道なミルクティー

けどなんだか今日はちょっとミルクを入れたい気分。

トポトポとゆっくりミルクを注ぎ、角砂糖を2個…

ゆっくりかき混ぜいただきます。

そんな私を見たってあなたの表情は変わらず、
文句一つ言いやしない。

あぁ…やっぱりミルクティーは美味しくない。
涙の味がする。

10/31/2025, 2:33:41 PM

【光と影】
光がないと影が存在しないように。
影がないと光が煌めかないように。
あなたは私の影だった。
私はあなたの光になれてた?

10/5/2025, 1:11:38 PM

【Moonlight】

新入社員として働き始めて早くも半年がすぎた。

今日も今日とてサービス残業で、クタクタになりながら帰りの電車に揺られている。

恋人に帰りの時刻を連絡すると、少しの間を開けてから『駅まで迎えに行く』の一言が返ってくる。

奇跡的に座れた席、疲労のせいか恋人のメッセージで安心してしまったせいか、ゆっくり目を閉じゆりかごに揺られる気持ちで眠りについてしまった。

・・・

目を覚ました時には、降車駅から5駅先の駅名が液晶パネルに表示されていた。

(まずいまずい。)と足早にホームに降り、嫌々ながらも改札を1度くぐりぬけて反対のホームへと移動する。

恋人へ再度遅れる事を連絡すると『疲れてるんだね』と返信が来る。優しい人、早く会いたい。

そのはずなのに、またもや眠ってしまう。

電車というゆりかごに大きく揺られるように、
あっちへ3駅乗り過ごし、こっちへ2駅乗り過ごし、
仕上げの1駅乗り過ごし、目的の駅へ到着したのは恋人に伝えた予定から1時間以上遅れた時刻だった。

(絶対に怒ってるだろうな)と内心ヒヤヒヤしながら、平謝りで恋人の車に乗り込む。

『疲れてたんだね』

月明かりが恋人の顔を照らし、目元に影を作っている
怒っているのか笑っているのか分からない。

『今日月が綺麗だから、見てみなよ』

そう言い、月明かりの方へ向き直すあなたの顔はとても綺麗で、キラキラと優しさを帯びていた。

怒っていなくて安心するより先に、自分の恋人がこんなに綺麗な顔をしていたことに驚きを隠せない。

言われた通り、窓から少し顔を外にのぞかせ空を見上げると、真ん丸な満月が空に輝いている。

仕事や目の前のことに精一杯で空を見上げることなんて少なくなっていたことを気付かされるとともに、
どれだけ自分が綺麗なものを見逃してきたのかに気づく。

ふと涙が頬をつたったが、あなたに気づかれたくなくてそっと自分の頬を拭うと、
運転席で月に夢中になっているあなたにただ一言

「世界で一番綺麗だね。」

と伝えた。




┈┈┈もしかしたらあなたは、月あかりに照らされた涙にミラー越しに気づいていたのかもしれない┈┈┈┈┈

9/8/2024, 3:30:45 AM

【踊るように】

ーー彼に手を引かれる

この日のために用意した綺麗な淡い青色のドレス。
シンデレラみたいで素敵ねと友人からも好評だった。

ーー彼にエスコートされる

彼はとてもハンサムだ。
周りの女が放っておかないだろう

ーー彼は愛している

私は知っている

ーー彼は、私の…私の父の地位を愛している。

中身はとても下品で、金と出世のことしか頭にない

ーーそんな彼と踊る

今日は私が自由でいられる最後の日だ。

ーーそんなこと彼は気づかない、気づくはずもない

私が私でいられる最後の時間、
淡い青色のドレスはふわりと広がり、ホールに大きな花を咲かせた。

5/3/2024, 2:42:34 AM

【優しくしないで】

いつからだろう、クラスのみんなに僕が見えなくなったのは。
いつからだろう…いつ間違えたんだろ。

そんな時、転校生の君が来た。
僕のことが見える唯一の人間。

『隣の席だねよろしく。』
「…」

けど、いつかどうせ見えなくなるんだろうから、
関わらない。関われない。

「僕に関わらないで…」

転校生は諦めず僕に話しかけた。
他の人に沢山声をかけられてるし、僕なんかいらないだろうに。

『一緒にご飯食べない?』
「食べないです。」
『お腹すいてない?』
「…」

僕が去った後、すぐに他の人に昼食に誘われている転校生。それでいい。他の人と同じになってしまえばいい。

『ねえ、なんであいつのこと無視してるの?
気分悪いからやめた方がいいよ。
声掛けてくれてありがと、友達は自分で選ぶから。』

教室の外。中から聞こえるその声に胸が震えた。
やめて。やめてよ…。
幽霊世界に慣れてきたのに、今更戻れないよ。
君のせいで、世界が崩れてく。戻っていく。

ねえ、それ以上優しくしないで。

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