【ぬるい炭酸と無口な君。】
単時は、コップに手を当てる。
すっかりぬるくなってしまった炭酸に、それほど時間が経ったのだと、気づかせられる。
空気は、もう抜けてるだろう。
…相変わらず聞こえてくるのは、蝉の声だけだ。
「……君の口が蓋ならば、炭酸は抜けなさそうだね。」
「は?」
「…………」
目を逸らす。
「…ばかじゃねえの」
「ふふ、ごめん。」
見つめてみる。
「はぁ……、だいたいな、お前のそういう……」
ねえ、単時、
静かな時間もいいけれど、
昔みたいにこうやって言い合う時間も僕は大好きなんだよ。
END
波にさらわれた手紙
乱暴な波が、僕の心を落ち着かせてくれた気がした。
塩水にもまれて、沈むことなく対岸に届いたのなら、
彼女が蓋を開けてくれたのなら、
紙に滲んだ僕の気持ちも、ぜんぶ、全部
空に帰すのかな。
僕の願い事は、全部君にあげる。
だから、
帰ってきてくれよ、実。
一年中、毎日だって、君のことを考えるけれど、
気温が暑くなるほど、思いも焦げていく。
もうすぐ、8月、君に会いたい。
そう思ってしまうのは条件反射なのかな。
帰った一夏の思い出。
川で遊んで、
虫をとって、
アイスを食べて
プールに行って……
子供の夏休みは長いと大人たちはいうけれど、
あの年の夏休みは、本当に一瞬だったな。
遊び疲れて見上げた明るい空。
明るいならまだ遊べるかも?とか二人で笑っておこられて。
……あの時の様には、走り回ることはできないけれど、
今年は、会えるといいな。
空はこんなにも澄んでいる。
……絵の具をたらしたのならどうなるんだろう。
どんどん滲んでいって、最後には絵の具と同化してしまうのか。
色が増えるほど、
本当の色がわかんなくなっていく。
僕も、空みたいだったのかな。
にごった色は、もう……
……なーんて。
こころを くもりあめ にしてみると、たまにすっきりする。
にごった水は、僕の生きてきた証をしめしてる。
線画は、黒で描くだろう?
きっと、今は人生の枠組みを完成させてるんだ。
色塗りは、いつだってゆっくりしていけばいい。
黒を知ったのなら、何色にだってなっていける。
黒は、最強の色ってわけだ!
かっこいいしな!!
雨のち晴。
すっきりした!
さ、行こうっと!
君の背中をおって走った。
だって、まだ伝えてないことがたくさんあった。
「待って!!!」
「お願い……っ!!」
僕の思いと逆みたいに、どんどん声が小さくなっていく。
っ…!
どんどん里の背中が小さくなっていく。
僕は、最後の力を振り絞ってめいいっぱいに叫んだ。
「里、ひとりにしないで……大好きだから!!!!」
普段の僕には、出せない言葉。
今なら、素直に言えた。
「……知ってるよ。そんなこと。」
少し間をあけて、笑いながら、里は振り返ってくれた。
「…っ!」
「俺だって、大好きだよ。
こんな親友しんでも会えねえよ。」
「ありがとな、里。」
「…っ!まって!!!」
「それなら、僕も一緒に行く!!!!」
「だめだ。」
「……っ!」
「俺の親友なんだから、分かってんだろ?」
「さ……と。」
「少し、離れるだけだ。」
「俺たちの絆があれば、また会えるさ。」
「さと……さと……」
里の名前を繰り返す自分を客観的に見てしまう。
どうして、言葉がでてこないんだろう。
僕は、僕は………
「はぁ……しゃぁねえな。」
冷たい身体が里に引き寄せられる。
「言葉なんて、いらねえよ。
おまえの顔で分かるっての。」
「また会えるから。本当だから、
またいつもみたいに、笑ってくれよ、な?」
「……うん。」
「また会おうな、湊。」
僕は、今の全部の気持ちを込めて、笑顔を贈った。
(二人がさいかいするのは、もう少し後のお話……)
HAPPY END
冷たい身体というのは、
里を失うと、身体が機能しないくらいという感じを込めてます。
(N N BOX)