かつて神と人が手と手を取り合い、死すら恐れるものではなく穏やかな眠りであった金の時代。
かつて慈しまれた神と人の関係が崩れ、神を敬う心を失ってしまった銀の時代。
火を与えられ、災厄の甕を開き、全てを押し流すことになった銅の時代。
善悪を測る天秤はその流れを覚えている。
神に愛され、神を愛し、そしてその劣悪さから見捨てられてしまった人間の行く末がどうなるのかは分からない。
昔は女神の指先に掲げられ争いの善悪を測っていたが、今は星空にその姿を掲げられている。
公明正大、是々非々とし、その天秤が私心で傾けられることはない。
誰の味方ではなく、誰の敵でもない。
星空に掲げられた天秤はこれから先、人の歩む先に自分の秤が必要とされるかどうかも分からない。
それでも星空から地上を見守るのは、まだ人に希望を見出しているからだ。
災厄の甕の中に残ったものが何だったのかは、今となっては神ですら分からないだろうが。
“善悪”
七夕の短冊に書いた願いが叶わないように、
流れ星に願いをこめても叶わないように、
星がはただ自然現象の一つというだけだ。
それでもそこに意味を持たせてくれたことに、意義があるのだから。
羊飼いが見上げた星空に、百獣の王の姿を見出してくれたように。
願いを叶えるのは自分の力だ。
それでも少しだけ、ほんの少しだけ、手助けをすることがすることができるなら。
気高い姿を見出して、そこに意味を持たせてくれるなら、それに付随するどんなものも受け止めよう。
瞬く星に、流れる星に意味を持たせよう。
そのためにただ誇らしく星空にあろうと、しし座は瞬いている。
“流れ星に願いを”
「おはよう」には「おはよう」を。
「行ってきます」には「行ってらっしゃい」を。
「こんにちは」には「こんにちは」、「こんばんは」には「こんばんは」。
たとえふてくされていても「ただいま」には「お帰りなさい」を。
それはマナーでもルールでもなく当たり前であると思えるように、そういう家族になっていきたいと笑う貴方が愛しくて。
“ルール”
前髪がうまくいった、晴れ。
スカート丈がかわいい、晴れ。
赤信号ばかりひっかかる、曇り。
通りすがりに美味しそうなスイーツ店発見、晴れ。
走って汗をたくさんかいた、雨。
待ち合わせ場所にいない、曇り。
汗でお化粧が崩れてる、雨。
コンビニの袋を持った彼が現れる、雨。
わたしの分のジュース買ってきてくれてる、雨。
走ったから服が乱れてる、雨。
服もお化粧も髪もなおしたい、雨、雨、大雨。
なのにちょっと笑ってるのがかわいい、晴れ。
手を繋いでくれる、今日の心模様は大嵐になりそう。
“今日の心模様”
「……何してんの?」
「何でもない」
「いや、……止めるって」
「何でもないってば」
「いや、おかしいでしょ」
「あんたには分かんないのよ!」
「分かんないけど、自分では分かってるんだろ?」
「分かってるよ!けど、たえと間違いだったとしても……!」
「姉ちゃん、だから痩せないんだよ」
「だって我慢できないんだもん〜〜〜!!」
「じゃあ、もう夏までに?ダイエット?とか言うの止めなよ……、去年も言ってたのにそうやってポテチ食べてたじゃん」
「あんたはうるさいの〜〜〜!!」
“たとえ間違いだったとしても”