かつて神と人が手と手を取り合い、死すら恐れるものではなく穏やかな眠りであった金の時代。
かつて慈しまれた神と人の関係が崩れ、神を敬う心を失ってしまった銀の時代。
火を与えられ、災厄の甕を開き、全てを押し流すことになった銅の時代。
善悪を測る天秤はその流れを覚えている。
神に愛され、神を愛し、そしてその劣悪さから見捨てられてしまった人間の行く末がどうなるのかは分からない。
昔は女神の指先に掲げられ争いの善悪を測っていたが、今は星空にその姿を掲げられている。
公明正大、是々非々とし、その天秤が私心で傾けられることはない。
誰の味方ではなく、誰の敵でもない。
星空に掲げられた天秤はこれから先、人の歩む先に自分の秤が必要とされるかどうかも分からない。
それでも星空から地上を見守るのは、まだ人に希望を見出しているからだ。
災厄の甕の中に残ったものが何だったのかは、今となっては神ですら分からないだろうが。
“善悪”
4/26/2024, 2:42:19 PM