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8/2/2023, 9:55:02 AM

「今日は私の誕生日で、とてもいいお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った。」

—『夜空に泳ぐチョコレートグラミー(新潮文庫)』町田そのこ著



好きな書き出しを引用


引用部分とは少し文脈が違いますが、
「明日もし晴れたら◯◯しよう」という祈りが命を繋ぐこともありますよね。

7/31/2023, 9:49:58 AM

▪️澄んだ瞳

お話は特に思い浮かばなかったので、今日は表現を考えてみる。いつか小説で使えたらいいな!

・夏祭りの夜、子どもたちの小さな手のひらで握られるビー玉みたいな瞳
・映る世界のすべてを吸収せんと光集める赤ん坊の瞳
・秋の天高く乾いた空色をそのまま落とし込んだような瞳
・甲府の山奥、朝の湖畔の水面である
・指で触れてみたくなるほどたっぷりの水を含んだ瞳
・何も知らない、愚かな瞳だ
・精巧なガラス細工が嵌め込まれた、意思を持たぬ瞳である
・その澄んだ瞳はつめたい温度をしているように見えるけれど、その実、張られた透明な膜はきっと驚くほどあついのだろう。
・舐めたい、と思う。舐めてしゃぶり、おれはその蜜を啜ってみたい。


後半は比喩表現ではなくなってしまいましたが〜( ;ᯅ; )

7/29/2023, 1:28:03 PM

▪️嵐が来ようとも

世界が滅亡する日まで、あと五日となった。滅亡する、という事実をおれが知ったのはちょうど一ヶ月前で、三週間と少しの間、滅亡の日に向けてのカウントダウンを刻みながら生活をしていたことになる。
嵐の前に憂鬱な気分になることって、あるでしょう。滅亡に向けてのカウントダウンが進行中の日々って、その憂鬱な気分が毎日毎日身体を蝕んでいる感じだ。やっと解放されるのか、と思うとスッキリする気持ちもあるし、でもやっぱり怖いな〜とも思う。
なんでも、地球の半分ほどあるでっかい隕石が追突するらしくって、おれたちはまじで全員死ぬらしい。そうとわかって仕舞えば、今まで営んできた生活だとか経済だとか政治だとか、愛とか恋とか。そんなもの、もうどうでも良くなってしまって、この一ヶ月はみんな、毎日どこかでお祭り騒ぎをしていた。
おれは今日、少し早いけれど、家族に別れの挨拶を済ませてきて、それから小学校から大学までの間で過ごした思い出の各地に行って、そうして恋人の家に帰ってきた。これから五日間は恋人と過ごす。
帰宅をしてテレビをつけると、明日は台風が接近してきて嵐になるよ〜という趣旨の予報がやっていた。最後の台風になるだろうか? キャスターの人が戸締りはしっかり、と呼びかけていたけれど、おれも、たぶん恋人も、明日は外に飛び出すんだと思う。なんちゃらごっこ、とか言って嵐の中で踊ったりキスしたりするの、昔からの夢だったんだ。
翌日は朝から大雨で、雨音で目覚めた。ベッドの中、隣でグースカ寝ている恋人の顎にはうっすら髭が生えていて、かわいいな、と思う。起きてお湯を沸かし、インスタントのコーヒーを水筒に詰めた。それから恋人を起こして着替え、嵐の中に足を踏み出す。
この世の終わりみたいな光景だった。肌にあたる雨は痛いし、風が強くて耳も痛いし、恋人の声もあんまり聞こえないし、視界が悪いし。でも、とても楽しい。それに、嵐の中で踊り狂っていたって死ぬわけじゃない。おれ達が死ぬのは五日後と決まっているから。
楽しい! おれ、T○レボリューションごっこするのが夢だった! そう叫んだおれの言葉を恋人はあんまり聞き取れていない様子だったけれど、彼もめちゃくちゃな笑顔をしていたからなんだか泣きたくなった。泣きたくなったから、嵐のなかでたくさん泣いた。抱き合ったTシャツがびしゃびしゃで冷たい。冷たくてあったかくて、ああ生きてるなぁ……と思う。

7/28/2023, 2:31:45 PM

お祭りがある日って、なんだか朝からソワソワしている。
小学生の頃は、今日の夕方六時に公園前に集合ねー!なんて言い合って、友達と浴衣を着るかどうか頭を突き合わせて会議をしていた。今見れば狭すぎる公園は、あの当時のお祭りの夜、どこまでも広がった赤くゆらめく異世界だった。
社会人になった今も、私は祭りのある日の朝は少しソワソワしている。というのも、例のその公園は家からすぐ近くにあって、私は数日前から公園が飾り付けられている様を目にする羽目になり、否が応でも無関係ではいられないからだ。それに、当日の夜は家にいても祭りの音がどんどこ聞こえてくる。家でじっとしている方が無理というものだ。
幼い頃は友人と連れ立って行っていた祭り。今は毎年一人でりんご飴を買いに行って、そこで食べて帰宅するだけだけれど、結構楽しかったりする。大人になってしまった私にとって、狭い公園は到底異世界とは思えない場所になってしまったのだけれど、でも、普段の光景とはやっぱり違う。
祭りって、そこで何をするかが大事なんじゃなくて、その場の空気を吸いに行くことが肝要なんじゃないかな、と思う。