まだ、終わりじゃない。
ゴールを決めなきゃどこまでだって行けるから。
ならばここはまだ僕のゴールじゃない。
限界にはまだまだ程遠い。
もう少しやれるだろ、って、いつも言い聞かせてここまでなんとかやってきたんだよ。
今回もそう、膝をつきそうになったけどそれでもどうにかなったんだから。
限界はここじゃない。
僕の旅はまだ、終わらない。
なんで。私ばっかこんなに我慢しなきゃいけないの。
いつも言うこと聞いてるのに。
歯向かったこと1度もないのに。
損するのっていつもこっち。
汚れ役ばっか。
何も報われた試しがない。
なのに。こんな私のこと見捨てるの?
かわいそうだとか、少しも思わないの?
あんたにとって私の存在ってその程度だったんだね。
もういいよだなんて、そんな簡単な言葉で片付けられちゃう神経が信じられない。
ねえ。
なんか言ってよ。私ばっかり、また。
「 」
喧嘩して、飛び出したあたしをきみは迎えに来てくれた。ものすごい怖い顔してた。でも怒られはしなかった。「帰るぞ」と、それだけ言って右手を掴まれ家までの道を歩いてる今。
無理矢理引っ張られて歩かされてるからきみの背中が見える。背中もやっぱり怒ってる。勝手に飛び出したこともそうだし、こんな時間に迷惑かけるなバカヤロって言いたいんだと思う。
ごめんなさい、って、言わなきゃダメなのに。つまらない意地がそうさせてくれない。喧嘩の原因なんてもうほとんど忘れかけてる。どっちが悪いかなんてどうでもよくなってる。ていうか多分、どっちも悪いんだと思う。
「寒いね」
ごめんでもありがとうでもなく、場違いなことをあたしが言ったから、きみは思わずこっちを見た。まるで珍獣を見るかのように凝視された。だって本当のことだもん。飛び出したのがかれこれ2時間くらい前。そこからずっと外にいたから身体が冷えちゃった。
なのに。
「全然。むしろ暑い」
よく見るときみの格好は半袖のTシャツ1枚だけ。まだ夜は冷えるのに、そんな薄着でよく彷徨けたね。心の声に留めておくはずが、無意識に口にしてたらしい。あたしの言葉を聞いてきみは眉間に深いシワを刻む。
「誰かさんが突然姿を消すから探して走り回ったせいで、今もの凄く暑い」
「あ……そ、なんだ」
「なんだその返事は」
「だって、そしたら、私のせいじゃん」
「そうなるな」
けど、そう言った時のきみの顔。斜め後ろからほんのちょっと見えた時、私には笑ってるふうに見えた。もう怒ってないのが分かったから、その腕に思い切り抱きついた。
「ほんとだ。暑いや」
「抱きつくな、暑苦しい」
ひどい。でも言葉と裏腹、引き剥がされるようなことはなかった。あれ、そう言えばなんでこんな時間にこんな所にいるんだっけ。忘れちゃうくらいだから、きっと大したことじゃないんだ。
「あそこのコンビニ寄ろ。アイス食べたい」
「お前の奢りな」
「財布持ってない」
「ざけんな」
きっとこんなふうに大したことない諍いが積み重なって、そのおかげでもっと好きになるのでしょう。今日のことも必要だった。そーゆうこと。
帰りにちゃんとアイス買ってもらえた。パピコ半分こして帰りました。
いつか死んだらどうなるんだろう。
天国か地獄のどっちかに向かうことになるのかな。
どっちがいい?
君は、優しいし良い子だから地獄に落とされるなんてのはまず無いだろうな。
そしたら僕も君と同じ場所がいいな。
けれど。
ぼくがこれまでにしてきたことって、そのどちらかの行先を決める時に問題になったりしないかな。
もっと堂々とした生き方をしてればよかった。
このままじゃ、君と同じ天国へ行けない気がする。
君と出会ってからは心を入れ替えて生きてきたけど、
昔のことはいつまでも消えないから。
どうせダメだとか、
思っちゃうんだよにゃあ。
夕方くらいに来てくれてボクと遊んでくれるあの子。
けど、いつも夕方のメロディが鳴ると帰っちゃう。
ほんとはもっとずっと遊んでたいのに、
“ママがおこるからいくね”って、ポケットからパンのミミ出しておいてく。
そんなのいいから遊んでよ、って思いをこめて鳴くんだけどぜんぜん伝わらにゃい。
もうすこし一緒にいてくれたらお月さまも見れるのに。
いつかあの子と夜の空をながめられる日がくるといいにゃあ。
お月さま、どうかよろしくおねがいします。
あの子がもっとたくさん、遊びにきてくれますように。