ゆかぽんたす

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2/11/2024, 9:55:33 AM

どれくらいそうしていただろう。窓の外が夕焼け色になっているからもうすぐ夜なんだと思う。
膝をかかえ部屋の隅でうずくまってた。理由は、言えない。きっと、僕のこの悩みは他の人たちにとっては“そんなこと”レベルで片づけられちゃうんだ。それを思うと簡単に誰かに打ち明ける気にならなかった。
誰もがみんな、悩みとか不安を抱えている。それ以上にもっとどす黒い感情をもってる人だっている。汚くて醜い姿だから普段は表に見せずに隠しているけど、どうしようもなくおさえられない時がある。それが、今だった。
1日何もせずじっとしていた。それでもなんの解決もしなかった。ただ無駄にしただけだった。
この苦しみから解放されたい。どうすれば、僕は前に進めるのだろうか。思い悩んで足掻いていれば、いつかは神様が救ってくれるのだろうか。今が1番気持ちのどん底だから何の希望も持てないや。だからせめて、生きてるだけで自分は素晴らしいと思わなくては。
明日になったら笑えているか、今日の夜が無事に眠りにつけるかも分からないけど。そろそろ涙を拭いて、立ち上がってみようか。きっと僕のように絶望してる人が今この瞬間にだってごまんといる。僕はその人たちに言ってあげたい。
何もしなくてもいい。
何を思ってもいい。
でも生きてることだけは、どうか否定しないで。

2/10/2024, 8:06:08 AM

「用途は、お祝いか何かですか?」
「あ、はい」
「どんな感じのにいたしましょう?」
「どんなのって……」
店員さんに言われて俺は分かりやすくどもる。どんなのって、どんなだ。うまく伝えられやしない。花なんて詳しいわけがない。固まる俺を見て、店員さんはにこりと笑った。
「じゃあ、贈る相手はどんな方ですか?」
「えと、母親です」
「お母様の好きな色は?」
「多分……黄色とかオレンジとか、そーゆうかんじの」
「ビタミンカラーですね。きっと元気で笑顔が似合うお母様なのですね」
「あ、まあ……そんなとこです」
俺の薄い反応にいちいち相槌を打って、ガラスケースの中から今言った色の花たちを取り出す。色んな種類、色んな色、色んな形の黄色と白とオレンジの花たちが合わさって、彼女の手によってあっという間に花束になった。
「こんな感じで、いかがでしょうか?」
「……サイコーっす」
うまく言えないけど、これを母さんが貰ったら絶対に喜んでくれると思った。花束を抱えてその人が笑う。笑顔が眩しい。なんか、今、すっごくうろたえてるんですけど俺。なんでかな、店員さんのこと直視できない。
「喜んでくれると良いですね」
会計をして、どうぞ、と俺に花束を差し出してくれる店員さんにお礼を言って店を出た。用意はしたものの、なんて言って渡そうか。こういうの本当に慣れてないんだよな。素直におめでとうで良いんだろうけど。息子が誕生日に花束くれるなんて雪でも降るかしら、とか言いそうだな。
「……ま、いっか」
綺麗な黄色いガーベラが腕の中で揺れた。花束の中で、俺が唯一知ってる花がそれだった。あとは何ていうのか分からない。母さんなら当然知ってるだろうから聞いてみるか。

花を買うのもなかなか気持ちがいいことを知った。今度また、誰かの誕生日でも何でもない日にあそこの花屋行ってみようかな。

2/9/2024, 9:10:09 AM

はいっ、おつかれー。

今日はもう終わり。だから考えるの、ひとまずやーめ。

明日の悩みは明日の自分がどうにかするからほっとこ。どうにかなるなる。

いったん、笑って?
なんかどーでも良くなってくるでしょ?
笑顔って、魔法なんだよ。
口角上げるだけで自然と気持ちが穏やかになるの。
そこに、甘いものプラスしたら最強だね。

今日を振り返るより、明日を心配するより、
とりあえず今!
今のあなたはどうしたいのか。
たまには自分に正直になって行動してみなよ。
絶対そのほうが気持ちいいから。

それから、自分のこと褒めたげてね。
今週もよく耐え抜いたねって。
はい、スマイルスマイル。
よくがんばりました。

2/8/2024, 8:07:32 AM

どこにも書けないのならここにも書けないよ。

自分の汚い部分。誰にも言えない、見せられない部分だもん。

自分と無関係の赤の他人だからって簡単に自分の汚い部分晒せないよ。

書いたところで指さされたり罵声浴びせられることは無いだろうけど、それでも、言えない。書けないよ。


でも、心のどっかで、害のない場所で打ち明けたいなぁって思う気持ちも1ミリくらいある。
きっと、許されたいんだろうなあ。
そんな汚くて酷いこと思っていてもあなたは悪くないよ、って、認められたいんだろうな。

誰にだろ。

誰に認められて許されたいんだろ。


人間って、ひとりが好きだったり、そのくせ周りと足並み揃えようとしたり。構わないでほしかったり、誰かの目が気になったり。

めんどくさい、生き物だな。

2/7/2024, 2:17:16 AM

「まず始めに、志望動機とご自身のPRポイントをお願いいたします。それでは右端の方から――」
また、始まった。
僕はこの空気が大嫌いだ。だけど、就職を希望するからには避けては通れない空気。弊社を志望する動機は何ですか。貴方は弊社でどのような活躍ができますか。将来どんなことを成し遂げたいと思いますか。馬鹿馬鹿しい。答えは全部クソ喰らえだ。許せるものならそう答えている、が、寝ずに創り上げた嘘ばかりのエントリーシートの内容を頭の中で思い浮かべながら思ってもないようなことを次々口にする。
「はい。私の強みは、コミュニケーション能力が高いことです」
そんなの分かるわけないだろ。だいたい、コミュニケーション能力って何なんだ。会話のキャッチボールとか空気が読めるのはここにいる皆ができて当たり前のことなのだ。
「御社に採用をいただくことが出来ましたら、何事にも一心不乱に取り組み事業成功の力になりたいと思います」
そんなことは当たり前だ。社会人になるのだから会社の役に立って当然、数字を伸ばして業績を上げなきゃ雇われる意味がない。
「将来は会社という枠にとらわれることなく、世のため人のために様々な活躍をしたいと思います」
だからその“様々な活躍”って何なんだ。そこを具体的に語れなきゃ内定は取れないぞ。上辺ばかりの言葉をペラペラ噛まずに言えたところで何の説得力もない。

もう、何なんだよ就活って。

「はあ…………」
通算何十社めかももう分からない不採用通知メールを受け取った、土曜日の朝。胃と瞼が重くて、とてもじゃないけど部屋から起きれる状態じゃなかった。何の音もしない部屋で、時計の秒針が無機質に時を刻む。かちかちかち、とリズムを崩さないその音が、あの集団面接の時に味わった閉塞感を思い起こさせた。

僕にできることはあるんだろうか。僕は社会に必要とされてるんだろうか。
さすがに、幾度もこけてばかりだと弱気な気持ちも起きてくる。このままじゃいかん、と思い気分転換にラジオをつけた。
『お次のリクエストはー……ラジオネーム“タカシのオカン”さんからです』
うちの母親かよ。偶然にも僕と同じ名前の息子を持つ母親からのリクエストらしい。
『うちの息子が就活でもがいているので是非元気の出るこの曲をお願いします、とのこと。そうよねぇ、今そんな時期だもんね、全国の就活生のみなさんにエールを!ということで聴いてください――』
紹介のあとに流れ出すイントロに目を見開いた。だってこれは、僕が大好きでよく聴いてた曲だ。そういえば最近聴いてなかった。懐かしいなあ。こっちのタカシもこの歌好きなのか。なんかちょっと親近感湧くな。
「へへへ」
いつの間にか鼻歌を歌ってる僕がいる。時計の針の音が気にならないくらいラジオの音量を上げて、終いにはわりと大きめの声で歌い上げていた。この曲を聴いてると自然と元気が出てきそうで、だからすごく好きなんだ。
そうだ、もう少し、やれるんだ。僕はこんなんで潰れるヤワじゃない。
「アイワナビーア君の全て!」
ちょっと休んだら、また僕らしく頑張ろう。
きっとうまくいく。今ならそんな気がする。

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