ゆかぽんたす

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12/21/2023, 8:11:56 AM

眼の前に焼け野原。
ついさっきここは空撃されたばかりで、あちらこちらに煙が上っていた。僕も、ここから早く逃げないといけないらしい。僕の身の安全を考えてくれる人がいないから自分で決めなくちゃならない。家族はこの前の襲撃で離れ離れになってしまった。生きてるのか死んでるのかも分からない。もしかしたら、あそこに広がってる瓦礫の下に埋もれているのかもしれない。それくらいひどい惨状があたり一面に広がっていた。
今日はクリスマスなんだって。誰かがさっき逃げながら言っていた。キリストの生誕日にこんな火の海の景色が見られるなんて悪趣味にもほどがある。こんな不幸な街には、どんなにいい子にしてようがサンディクローズもやって来ないだろうな。
遠くでまた、爆撃が聞こえた。誰かの悲鳴と男の人の怒号とサイレンが一気に聞こえてくる。ぐちゃぐちゃになって見事な不協和音を奏でている。聖なる夜に、こんな音楽が流れることがあるだろうか。祈りを捧げる日だというのに、誰もそれどころではない。ならせめて僕だけでも、神に祝福と敬愛を。
その場で寝転んで夜空を見上げた。コンクリートの上は固くて冷たい。最高に寝心地の悪いベッドの上でサイレントナイトを口ずさむ。なんだかベルの音が聞こえてきそうだ。地上はこんなに荒れていても空はいつものように綺麗なままだった。
「Silent night , Holy night...」
あのどれかの星が、僕のもとへ落ちてきてくれないかな。そして願いを叶えてくれないかな。もうこんな日々は嫌だ。プレゼントもご馳走も要らない。代わりに早く戦争を終わらせて。もし来てくれたら、僕はそう願うんだ。

12/20/2023, 9:57:19 AM

君と喧嘩してから今日で1ヶ月。原因なんてもう忘れたけど、多分僕に理由があるんだろう。
ああ、そうだった、僕がなんでもないふうに言った言葉を君が本気にとらえたんだ。そんなにムキになるなよ、って言ったら君は目をひん剥いて怒り出した。まさしく火に油を注いだわけだ。
別に、そんなに気にする話でもないだろう?冗談がわからないのかよ。先週だって、『週末晴れらしいからどっか行かない?』って送ったのに君はまるで無視だ。だからこうして1ヶ月経ってしまった。何なんだよ。僕もそろそろ黙ってないぞ。もしかして、僕が謝るまでその態度を続けるつもりなのか?なんでだよ、僕は悪いことなんかしてないのに。マジになった君も君だろ。だからお互い様ってわけだ。
なのに、それでも無視を決め込むってのなら僕だって苛々するさ。もういい加減にしてくれよ。せめて電話には出て。兎にも角にも、話をしないことには解決しないだろう?
君がこんなだから、寝ても覚めても君のことばかり考えてる。でも、不思議と憎悪とか苛立ちみたいな負の感情ではないんだ。ただ君に許されたいだけ。じゃないと、この得体のしれない感情がもっと成長してしまう。君に触れたい声が聞きたい。そう思ってやまないよ。なんていうんだい、これは。独りでいるのはもう沢山だよ。

12/19/2023, 9:38:06 AM

『今年の冬は帰れそうだよ』
今朝起きたら届いてたメール。夢じゃないかって、本当にあなたからのメッセージなのかって、何度も何度も見返した。多分、20回くらいは朝の1時間で見返したと思う。それくらい嬉しくて、浮かれ気分になりながら朝の支度をしてたら危うく遅刻するとこだった。
もちろん、私はすぐに返信した。いつ帰ってくる?どれくらいこっちいるの?今月は無理なのかな?全て質問で送った私のメッセージに返事が来たのは夕方になる頃。仕事が忙しいのが分かってるから文句なんて言わないけど、早く返事来ないかなあとはずっと思ってた。返ってきたメッセージは、
『どこに行きたいとか、考えておいて』
という一文のみ。
どこに、行こうか。
あなたと遊びに行きたい場所はいっぱいある。冬の時期だけしか見れない場所や、普通に1日中遊んでいられる場所にも行きたい。沢山ありすぎて絞れないや。それくらい、あなたの帰りが待ち遠しい。でも、とりあえずはいつものカフェテリアに行きたいよ。そこであなたはいつもコーヒーを頼む。ブラックかと思いきやお砂糖2つも入れちゃう甘党なの、私だけが知っている秘密。
そんなこと考えてたら、今以上に会いたくなった。早く帰ってこないかなあ、と冬の空に独り言を呟きながら私は家路に向かってます。今年の冬は一緒にいろんなところに行こうね。

12/18/2023, 9:58:47 AM

もー。
今さらそんなこと言ったってなんの意味もないんだってば。よもやま話。あとの祭り。結論は出ない。
とりあえず、そこ座んなよ。コーヒー淹れたげるから。いつまでもクヨクヨしないの。貧乏神に憑かれちゃうよ。
いいから笑って、ほら。こーゆう時こそ笑顔、笑顔。無理にでもいいから口角上げてみ?うわ、何じゃそりゃブサイク。あぁ、ごめんごめん今のは言いすぎた。傷心してるあんたにそれは駄目だよね。
知ってる?1日に笑う時間が多い人と少ない人を比べると寿命の差が出るんだって。そーゆう統計があるらしい。詳しいことよくわかんないけど、とにかく、笑ってたほうがいいことあるらしいよ?ほら、笑う門には福来たるって言葉もあるくらいだしね。他にも、……えーと、セロトニン?とか、幸せホルモンがめちゃめちゃ出るのが笑う人なんだって。だからさ、とりあえず辛くても悲しくても笑っとけって話。え?お前はお気楽でいいね、って?そんなの、お気楽でなきゃやってられないじゃん。笑っても笑わなくても、今日やることは変わんないし。いいのいいの、悩みはあっても、全部が解決できるとは限らないからさ。だったら、笑ってましょーって話。はい、以上、“あたしの笑顔のすすめ講座”でしたっ。どう?元気出た?え?これこそとりとめのない話だって?ひどっ、折角元気づけてあげたのに。あぁ、でもいい顔してる。そうそうそれ、そーやって笑ってればまた次良いことあるよ。あたしが保証する。

12/17/2023, 9:46:23 AM

喉が痛くて空咳が出る。頭がぽーっとするし動くのもちょっとしんどい。
『風邪だろ、それ』
「え」
『俺もうあがるとこだから、スーパー寄ってお前んち寄るわ。なんか欲しいもんある?薬はあるんだよな?』
「うん、多分」
『じゃー適当にお前が食えそうなもん買ってから向かうわ』
じゃあな、と言った電話の相手。このままでは切られてしまう。
「ま、待って!」
『あ?どした?』
「まだ分かんないよ。ほら、ちょっと一時的に具合悪いだけで、別に風邪じゃない……かもだし」
『どー見たって風邪だろそれは。いや見てはいねぇか。熱は?』
「……まだ」
『じゃあ今計ってみろよ。このまま電話繋いでてやるから』
「いいの?」
『おー。今、駅に向かって歩いてるとこ』
さみー、と少々お気楽な君の声。なんでそんな気楽でいられるの。私はそんなに楽観的になれない。だって、これで本当に熱があったら。本当に風邪だったら。明日のデートは中止になっちゃうんだよ。もやもやしながらじっとしてると胸元からピピピと電子音が鳴る。
「……38℃」
『カンペキ風邪じゃん』
ははは、と笑い声が聞こえる。大好きな君の声なのに、今は痛いほど心に染みて泣きたくなった。もう駄目だ。これでもう明日は君に会えないのが決定してしまった。
「ごめん」
『なにが?』
「風邪だったから。だから……明日、遊びに行けない」
『なんだそんなことかよ』
そんなことって。明日のお出かけ、すっごく楽しみにしてたのに。こんなことになっちゃうなんて。私の風邪のせいで、こんな。じわりと涙が溢れ出す。
「こんな、ことに」
『ばーか。遊びになんてのはいつでも行けんだろが。それに、今からお前に会いに行くんだから悲しむことねーだろ』
「うん」
『治ったらお前が行きたいとこ決めろよな。これ、治るまでの宿題。もちろん早く治すのも宿題。お、電車来るわ。んじゃ、あとでな』
そんな、わくわくする宿題を課して、彼は電話を切った。早く良くならなきゃ。そう強く決意した。

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