【勿忘草(わすれなぐさ)】
「最近さ、花言葉調べるのハマってんだけど」
と、カフェでくつろいでいる時に唐突に友達が話し出す。
「は?急に何?」
「いや、この間彼氏にバラ貰ってさ。テレビでやってたんだけどバラの本数とかでも意味が変わるって言ってんの思い出して」
それで色んな花にどんな花言葉があるか興味を持ったらしい。
なんだそりゃ、と内心思いながらへぇ。と相槌を打つ。
「そんで誕生花って言うのもあるみたいで調べたんだよね」
誕生花。聞いたことはあるが…
「で、アンタのはなんだったの?」
「藤と、勿忘草と、花海棠らしい」
私の質問に彼女が答える。
「勿忘草ってよく聞くけどどんな花なん?」
そう言うとこんなの。とスマホの画面を見せてくる友達。そこには、青い小さな花が集まっている画像が映されていた。
「あー、よく道端で見るやつね。これってそんな名前なんだ」
よく聞く名前だからてっきり有名な花かと正直思った。
「ね、ちょっと意外だよね」
と、彼女は私から画面を離して話す。
「でも名前の由来はちょっと切ないんだよ」
そう言って簡単なあらすじを私に聞かせた。
その後しばらくカフェで話をしたあと私たちは店を出た。彼女と別れる際、その奥に青く小さい花が咲いているのを見つけた。
【ブランコ】
ある夏休みの日、わたしはお父さんに連れられて田舎のおじいちゃんの家に遊びに行った。
おじいちゃんの家にはあまり行ったことなくて、少し緊張していた。
「おやつだよ」
って、おばあちゃんがとうもろこしを出してくれる。かぶりつくと、甘い汁が溢れ出した。
おやつを食べ終えたら遊びに行きたくなったため、お父さんたちに外に出かけることを伝える。
「迷子にならないようにね」
と、念の為防犯ブザーを持たされた。
家のすぐそばで遊んでいると、同い年ぐらいの女の子が近づいてきた。
「あなた、ここのおばあちゃんちの子?」
「うん、夏休みだから遊びに来たの」
そう言うと、女の子はニコッと笑って
「あたしね、よく公園でここのおばあちゃんに会うんだ」
と教えてくれた。
それから少し仲良くなった私達は、公園で遊ぶことにした。
滑り台に砂場、鉄棒などありきたりな遊具のある普通の公園だったけど目を引いたのはブランコだった。
それは、カゴ付きのブランコだった。今まで見た事なかったブランコにわたしははしゃぐ。
女の子はそんなに珍しい?と不思議に思ったみたいだけど、わたしが初めて見た。というと驚いていた。
それから公園でしばらく遊んだあと、日が傾き始めたのを合図に、また明日遊ぶ約束をしてわたしたちは別れた。
【旅路の果てに】
私は休日に一人旅をすることが多い。今日は久しぶりにツアー参加をしてみることにした。
ツアーはまだ旅慣れてない時に何度か利用したきりだ。
今回はバス日帰りでミステリーツアーに参加してみることにした。
まずは早速昼食。ちょっと贅沢な懐石料理を堪能した。次にバスに乗りこみ景色を眺める。どうやら西の方面に向かっているようだ。
このバス移動間の時間帯も景色を眺めるのが好きな私には至福の時間だ。
たどり着いた場所は観光スポットと呼ばれる自然豊かな場所。木々が鬱蒼と生い茂る中に陽の光に照らされ、小さな滝がキラキラ輝いていた。
お次はワインの試飲会。アルコール苦手な人にはぶどうジュースが用意されている。
行き先も目的地も分からないこの旅は、計画性のない私にとって楽しめるものだった。
最後には軽いお弁当と共にお土産を渡される。
今回も満足のいく旅だった。また明日から仕事だと思うと憂鬱だが、次の休日までに、今度はどんな小旅行を楽しもうか考えるのも好きだ。
【あなたに届けたい】
私は趣味でハンドメイド作家をやっている。
よくあるレジンでキーホルダー作りをしているのだが、ある時SNSに制作動画を上げたところ、フルオーダーの依頼が入ったことで、オーダーメイドも受け付けるようになった。
依頼主さんの納得のいく作品に仕上げるため、丁寧なヒアリングは欠かせない。
ある程度構想が決まったらいよいよ制作していく。顔も分からないが、相手の喜ぶ様子を思い浮かべながら作っていると、自然とこちらまで笑顔になった。
そうして出来上がった作品を見ると、なんだか送り出すのが惜しまれるような、そんな気持ちになる。
だけど、自分でも納得いかないものを相手に送り届けるのも失礼だ。私自身でも欲しくなるような、そんな作品を私を頼ってくれた人に送りたい。
出来上がった作品を丁寧に包み、小さなメッセージカードとともに届けてもらう。
後日、お礼を貰うと作ってよかったと思うと同時に、これからも腕を上げていきたいと励みになるのだ。
【I LOVE...】
私は猫好きであると自負している。
部屋のインテリアはほとんど猫だし、猫のぬいぐるみに埋もれる毎日だ。
ただし、うちはアパートなので猫が飼えない。それだけが難点だった。
ある日仕事に出社するため、私は電車に乗り込む。すぐに降りるため出入口の近くにたっていたのだけど、扉の側に立つ男性に目がいった。
というのも、その男性は猫まみれだったからだ。
別に猫を連れ歩いていたという訳では無い。
着ているパーカーは耳の付いた猫のお顔のパーカー。持っているバッグはたくさんの猫がプリントされたトートバッグ。なんと、ズボンや靴までも猫があしらわれていたのだ。
そんな男性を見た私は、自分がまだまだだと悟ってしまった。とりあえず、彼が身につけていたものをどこで入手したのか気になりつつ出社するのであった。