【太陽のような】
今日の外回りの営業はこれで終了だが、少し休憩していこうと近くの公園に入った。それから直ぐに数人の子供たちがやってきた。
その内の2、3人はランドセルを背負っているところを見ると、まだ下校途中のようだ。
子供の体温は暖かい。だからきっと、寒い冬なんかも短パンで過ごせる子がいるんだろう。
俺はそんなことを思いながら、熱い缶コーヒー片手に、ベンチから公園ではしゃぐ子供たちを見ていた。
その時、コロコロとボールが目の前に転がってくる。子供たちのうちの一人が持ってきたものだ。
俺は彼らに向かってボールを蹴って寄越す。
彼らは笑ってありがとうございますと、俺に向かって言ったため、手を振り答える。
「先ずはちゃんと家に帰れよ」
ランドセルを見ながら彼らに告げると、はーいと笑顔でランドセルを手に持ち、また後でと何人かが帰っていく。
素直な子供たちの笑顔に、何故だか暖かくなったような気がした。
その後、手に持っていたコーヒーも空になっていたため、俺は公園を後にした。
【0からの】
授業開始を知らせるチャイムがなり、早速僕は頭を抱えた。
目の前には1枚の厚い板。今日は技術の木工制作の日だ。自由に作っていいと言われ、優柔不断な僕は何を作ろうか考えた。
周りでは、ラックやボックスを作ると言った声が上がっている。
センスのない僕は、とにかく簡単なものを作ろうと考える。
渡された紙に設計図を書出し、早速木材を切る生徒まで現れる。早いな、と思いつつ、取り敢えず完成図から書き出そうとするが手が止まってしまう。
さんざん考えた挙句、僕は引き出しボックスを作ることにし、紙に書出していく。
制作や設計は当然のこと、アイデアから考え出すのも難しい僕は、生み出すことの大変さを知った。
【同情】
彼氏に振られた。失意の時に偶然かかってきた仲の良いグループからの、飲み会の連絡。
とにかくこの気分を吹き飛ばそうと日程を合わせて、私たちは会うことにした。
「どうしたの?なんか元気ないじゃん」
友達のひとりが私に声をかける。他人の目から見ても落ち込んでいるのがわかるくらい、元気ないんだなと気づいた。
「ちょっと前に彼氏に振られた」
その場にいる全員が驚く。
「なんで?アンタたち上手くやってたじゃん」
「他に好きな人が出来たんだって」
「そんなんで簡単に振るの?その男最低じゃん」
次々に言葉が飛び交ったが、早く飲んで気分をサッパリさせたかった私は、最後に締めくくる。
「だから今日は飲みまくろうと思って。早く行こうよ」
「じゃあ今日は慰め会だね」
最後のその一言に周りも頷く。
正直、同情なんていらないんだけどと思ったのは内緒にしていよう。
【枯葉】
暑さも和らいで段々と肌寒い季節になってきた。
上を見ると、瑞々しさを失った枯葉が木の枝にしがみついている。
風が吹く度一枚、また一枚と枝から引き離される。
夏にはたくさんの衣をつけていた木々も、今はすっかり葉が抜けて寒々しい。
さて、掃き掃除の続きをしようか。
きっと、綺麗にしたところで数時間後には風で運ばれてきた枯葉が、また地面を覆っているのだろうけれど。
【今日にさよなら】
「今日は午後から雨が降るよ」
得意げに僕が言う。
「えー?そんなこと天気予報で言ってなかったよ」
周りは信じない。僕だって最初はそうだった。
信じられないかもしれないが、僕は今2月18日を繰り返している。どうしてこうなったのかは分からない。
ただ、一日が終わって目が覚めると同じ日に戻っているのだ。今じゃクラスメイトの次のセリフまで言える。
僕は「今日」が終わる方法を探す。けれど、いくら探しても見つからなかった。
何度目かの「今日」を過ごしたその日、とうとう見つけた。首と胴体に別れてしまったお地蔵様を。
友達とふざけあっていた時に、木陰に隠れていたこのお地蔵様を知らずのうちに壊してしまっていたようだ。
次のループの際、僕はお地蔵様を壊すことのないよう気をつけながら今までのお詫びも兼ねて綺麗に掃除をした。
翌朝、目が覚めると窓には雨が打ち付けられていた。