つつも

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1/8/2024, 11:55:37 AM

【色とりどり】

趣味で塗り絵をしている私は、今回一風変わった色で表現してみたいと色鉛筆片手に考える。
どうしようか、ステンドグラス風?それともモノクロも面白いかもしれない。少しインスピレーションを得ようと本屋へ向かう。

カラーコーディネートなどの本を立ち読みしていたがあまりしっくり来ない。本屋を歩いていると、懐かしいタイトルに足が止まる。
確か、色とりどりの鳥に仲間はずれにされる真っ黒な鳥の話。私はその本を手に取り表紙を見る。
「まっくろネリノ」
子供の頃、気にもとめなかったその優しい色合いに不思議と心惹かれた。
…そういえば、絵本の色合いって柔らかくて独特な印象のものが多いな。そう思って絵本のコーナーを見て回る。

何となくヒントを得た私は、手に取った本を購入し店を出たのだった。

1/7/2024, 1:54:28 PM

【雪】

「いやー、今日は沢山回ったね!」
そうだねと相槌ながら私たちはエレベーターに乗る。手にはタオルや浴衣などのお風呂セット。
観光地巡りに旅行に来ていた私と友人は、今晩泊まるホテルの浴場へと足を運んでいた。
「知ってる?ここの露天風呂、絶景らしいよ」
確かに、このホテルは屋上に浴場が設置されている。豊かな自然に建つこのホテルは景色を売りにしていた。
「でも夜だから真っ暗で何も見えないよ、きっと」
私のその言葉に友人はそれもそっかと、少しばかり残念そう。
「でもさ、また朝に入りに来ればいいじゃん」

そんな会話をしながら、とうとう私たちは浴場に足を踏み入れる。頭や体を洗って室内の浴室で身体を休めていた頃、
「そろそろ外に行ってみよ」
と、友人に誘われ露天風呂へ。
冬真っ只中の夜はとても冷える。外に出た瞬間、私たちは足早に露天風呂の浴室へと向かう。少し高めの温度設定で、顔は冷たいが身体は少し暑い。

景色に目をやると、やはり真っ暗で、かろうじて山の影であろう輪郭がぼんやりと見えるだけだった。
そんな時、上からなにか降ってきた。
露天風呂の薄暗い明かりの中確認すると、それは雪だった。パラパラと雪が降り出し、明かりに照らされ輝いた。
「やっぱり、絶景だよ」
隣で友人が呟いた。

1/6/2024, 12:35:12 PM

【君と一緒に】

近々引越しを控えているため、僕は大掃除をしていた。身近にあるものを整理したあと、押し入れの中にある断捨離に取り掛かる。着なくなった服やオシャレなお菓子缶など、物の溢れかえった押し入れの中はちょっとした宝探しだ。
その時、僕はあるものに目がいった。
1冊の古いアルバム。大掃除あるあるだなと思いつつも、僕はそれを手に取ると最初のページを開いた。

それは赤ん坊の頃から記録している僕のアルバムだった。パラパラとめくっていると、一枚の写真に目が止まる。幼い僕によりそう1匹のトイプードル。
そうだ、彼はいつも僕と一緒だった。一緒に寝たり散歩したり、僕が泣いているとすぐにそばに来てくれていた。
残念ながら、彼は僕が中学に上がった頃に寿命で息を引き取ってしまった。

写真を見た僕は思わず押し入れにあった箱に手を伸ばす。中に入っていたのは犬用のリード。初めての友達を失ってしまった悲しみで、せめて思い出に残るものを持っていたいと思った当時の僕は、親にも内緒でずっとこのリードを持っていた。
しばらく眺めたあと、僕はこのリードを手放す決意をした。君と共にすごした思い出ならば、このアルバムにしっかり記録されているから。

1/5/2024, 2:48:39 PM

【冬晴れ】

空には雲ひとつない穏やかで澄んだ青色が広がる。木々は既に葉が落ちきって、代わりに真っ白な雪が衣となっている。

冷たい空気が身体中まとわりつくが 、私はこの季節が好きだ。雪の薄く積もるこの風景ももちろんだが、この澄み切った空間を散歩していると心も洗われた気分になる。鼻先と耳が冷たくなるのを感じながら、歩を進める。
すると、少し遠くに雀がやってきた。冬毛のため、まん丸としたフォルムが可愛らしい。私は小さく微笑むと、スマホを取りだし写真を撮った。あまり綺麗に撮れなかったが満足だ。

さて、そろそろ帰ろうか。暖かいココアが飲みたくなってきた。
木々は陽の光に照らされ光り輝いていた。

1/4/2024, 12:04:41 PM

【幸せとは】

「じゃあ次はお豆腐ですよー」
小さなシリコンスプーンにペースト状の豆腐を乗せて口に運ぶ。彼はひとくち食べると顔を顰めて舌を出した。
「これは苦手かな、じゃあかぼちゃはどうかな?」
今度はかぼちゃペーストを運ぶ。彼の反応は先程と違って笑顔で手足をばたつかせている。小さな身体で一生懸命に感情を行動に移す仕草が愛らしい。
「美味しいね、良かったねー」

嫌な反応も嬉しい反応も見ていて頬が緩んでしまう。苦手なものと好きなものをバランスよく口に運ぶ。時折、彼は確かめるように器に手を伸ばしたり、手を突き出して嫌々のポーズをする。何とか半分以上食べ終わったところで離乳食は終了。

「いっぱい食べたね、えらいねー」
たくさん褒めると、彼はまた嬉しそうに手足を動かす。どんな仕草も可愛いけれど彼の笑顔が1番可愛くて、私も笑顔になり幸せになれるのだ。

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