ここはまさに楽園だ
私は保護猫カフェの中で、色んな猫たちに囲まれながら心の安寧をはかっていた。
やはり動物っていいな。
心が純粋で、こっちまで清らかになるような気がするんだ。
保護猫カフェから帰ってきたら、次は家で待つクロちゃんを撫で回し、二人で布団の上でゴロゴロしてみた。
クロちゃんはとにかく人の股ぐらでうたた寝するのが好きで、いまもそっとやってきては何くわぬ顔でくつろいでいる。
これぞ共依存。
お互いがいないと崩れてしまう関係なんだろうな。
せっかくの、せっかくの快晴なのに……
ニュースには黄砂だ花粉だと、私のアレルギーを刺激するはなしばかり。
「はぁっくしょいっ!」
かんでもかんでも鼻が出る。
せっかくの快晴なのに、この季節は出かけたくてもこわくて出歩けない。
「春、好きだったんだけどなぁ……。……はっくしょいっ!!」
「いや、なんて暴風なんだっ」
朝からの強風は、仕事終わりの帰り道も変わりなく吹き荒れていた。
あまりに強い風が洗濯物をぐちゃぐちゃにし、私の髪の毛もぐちゃぐちゃにし、ベランダに置かれた荷物もぐちゃぐちゃにしてゆく。
「ああもう……」
空は分厚い雲に覆われていて、沈む夕日が欠片も見つけることができない程だ。
一雨来る前に帰宅出来てほんとに良かったが、こんな強風のなかじゃあ夜はうるさくて眠れないかもしれない。
「うーん、せっかくの週末だし、こんな日は眠るのを諦めてしまおうか」
息をつくと、作業部屋へと行き分厚い本を手に取ると、夜明け近くまでそれを読みふけった。
今日もまた精神的にグラグラで、後半は酷いもんだった。
このままじゃいけないって事くらいは自分でも重々承知しているんだけど、承知していたからって気分の落ち込みが無くなるかって言われれば、それはまた別の話なのだ。
1つだけ言えることは、やはり前向きな人生を送ることが心にもきっと良いはずなんだ。
何かこう、人生をかけて夢中になることでも見つけられれば、気分が沈む隙もないくらいのめり込むものがあれば、私自身も立ち上がれるのかもしれない……
こたつで寝こけているクロちゃんにそっと近付いて、そっとその頭のにおいをかいでしまうのが、ここ最近の私の日課となっていた。
「はぁ、いいにおい」
…………ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
クロちゃんのゴロゴロを聞きながら、大切なものを扱うように引き寄せて撫でてみた。
「クロちゃん、干した布団みたいなにおいがするねぇ。いいねぇ」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
春の日差しを浴びてホカホカになったクロちゃんと過ごす、ちょっとほっこりした一時が、私は大好きなんだなぁ。