【星空の下で】——page6——
僕と君は星マニア。
子供の時から星が好きで、夏休みは毎年一緒に星を見に来ている。
高校3年生の夏休み。
君と星を見るのはこれで最後かもしれない。
僕は流れ星を待ちながらそんなことを考えた。
お願いをするほどではないかもしれないし、君にとっては迷惑かもしれない。
でも、星を見るとき、隣にいるのは君がいい。
「いつかまた来ようね」
その言葉は僕から聞こえたのか、君から聞こえたのか。
数年後。
僕たちは約束通り、また星を見に来た。
あの頃とは違って、片手にビールを持ちながら。
君は楽しそうに最近のことを話して、思い出話をして、染まった髪を手でときながら空を眺める。
そして、スマホを出して星を調べる。
僕も星を眺めるが、すぐに視線を下げる。
今日の狙いは星じゃなくて、君だから。
【絆】—page5—
運命の人は赤い糸で結ばれてる。
じゃあ、「絆」は何で結ばれるのだろうか。
そもそも結ばれるのか?
私は、金色の光で結ばれると思う。
色は金色でなくても、何か、輝いたもので結ばれると思う。
それは、努力や友情、思い出、あるいは記憶にないものかもしれない。
でも、今までの日々が絆になると思う。
私も、金色の光、探してみます。
【行かないで】-page4-
「行かないで」
そう感じたことは16年間で数回しかない。
片思いのままの何も知らない恋、
全てを出し切った夏の大会の終わり、
明日が来るのが怖い日の夜、
孤独な夜を迎える前に落ちていく夕日。
でも、時間が私を待ってくれたことはなかった。
嬉しい時も悲しい時も、時は平等に過ぎていく。
でも、私たちにはそれがいい。
全部の時間が平等じゃないと困るから。
1秒1秒を大切に生きるのも、時の流れに任せて生きるのも私たちには平等な時間が与えられる。
時の法則上、私たちは自由のままでいい。
そう考えると、肩の荷が降りたように思えた。
【どこまでも続く青い空】-page3-
この世界には情報が溢れてる。
知って嬉しい情報も、知らずにいれば幸せだった情報も全部。
知ることも知らないことも怖いこと。
空がどこまで続いているかなんて知らなくてもいい。
人生後何年生きられるかがわからないことと同じように、空もどこまで続いているかわからない。
無理に知ろうとしないでいい。
知ることで自分を苦しめないで。
知らないまま幸せでいてもいいから。
昨日の空は見ないで、明日の空を見つめて、
ただ、青くて綺麗な空と一緒に生きるだけでいい。
【衣替え】-page2-
暑い夏が終わり、肌寒くなる秋が始まった。
私も最近衣替えをした。
半袖から長袖へ移ると洋服ダンスは冬服で重くなった。
他の家は服だけでなく家具も衣替えをするらしい。
涼しい夏用マットから暖かいラグマットに、ただのテーブルからこたつに。
夏と冬では全く違う景色になるらしい。
私は、衣替えをしたらきっと心も変わるんだろうなと思いながらも私の部屋は夏も冬も変わらないまま。
まあ、私の心も変わらないまま。
生活は部屋に出るというのを聞いたことがある。
部屋が変われば生活が変わるのか、生活が変われば部屋が変わるのか、どちらかわからないけど。
衣替えと一緒に私の生活が変わったらなって思う。
私の見た目も、性格も、私の周りも。
こんな他力本願でも、いいよね。きっと。