愛と平和
ラブアンドピースか……。らぶ、ぴーすぴーす。
夢の中に出てくる君はいっつもピースをしてたな。たとえ何があろうが、僕に向かってさ。
川に流されてようが、スカイダイビング中だろうが、イノシシの群れに追われてようが、溶岩に沈みようが、いつでも、必ず。
なんでだろ?って、そんな些細な事を気にしがちな性格なもんで、すごく気になっちゃうんだ。困ったもんだよね。
ぴーす。サカバンバスピスって、ほんとはすんごい怖い顔してるんだってね。さかばん、ぴすぴーす?そいつに手が生えてたら、ピースしてもらったのにね。
バスか。昔、僕がよく使ってたバスがね、もうすぐ運行が終わるらしいんだ。 さみしいね。よく、車窓から空を泳ぐ魚を見てたのになあ。…あっ、
あれもさかばんぴすぴす?ん?バスピスか。よくわからんね。…なーんて。だはっ!
…君のそういうとこ…笑い方とか。結構好きだったんだぜ、ってさ。呟いてもさあ。
履歴を遡って、タイムラインをちょんぎって、会いに行こうとしても中々行けたもんじゃあないからさあ。
…だから、近所の川でね、石積みの練習してるよ。
ほら、将来役に立つかもだし。…三途の川、とかの。縁起でもねえな! ま、君が来るまでさ、積み続けてあげるよ。
すんごく無駄に、平和な世界だから。
それが、不器用な僕からの精一杯の愛だ!
「あの子たちはもう戻ってこないって、頭では解っています。わかっては、いるんですけど…」
「………」
「…わたしにはもう、なんにもありませんから…」
そういって、彼女はにへ、と笑ってみせた。
過ぎ去った日々に縋ることしかできない。幸せな夢を見続けることしかできないのだから。私たちは。
ひどく無機質な白い部屋。
そこには、哀れな人間が、ひとりいるだけだった。
月夜
ベランダで涼しい夜風に当たる。
そこまで高くも低くもないマンションからの景色。
遠くの夜景、スーパーの看板がきらきらと光って見えた。
飛行機だってちかちか点滅しながら飛んでいる。
でも空は昼間とは違い、吸い込まれそうな黒。
そこにはぽつぽつと、ちいさな白い星が浮いていて。
……三つ。兄弟みたいに、綺麗に並んだ星がある。オリオン座ぐらいは私にだってわかった。
私は一日の終わりに、こうやってベランダから夜空を眺めるのが好きだった。
輝く夜景、飛行機、星……
それを、月光を浴びながら眺め……
……………月光?
あれ、月、つきは…どこいったんだ。
私は毎晩同じ時間にベランダに出る。
昨日までは真上にあったんだ、なのに見当たらない。
季節で位置が変わることは知っている。
でも…こんな風に消えるわけがない。一体いつから?
気になる。気になってしまう。
いつもなら部屋に戻ったらすぐ布団に入る…
が、今日は寝間着でそのまま外へ飛び出した。
もしかしたら、建物に隠れて見えなかったかもしれない。そう考えて……
マンションの外に出た。
やはり、雲ひとつない。綺麗な星ばかり。
でも月はなかった。
段々と怖くなってきて駆け出して…近所の眺めがいいところを探した。
でも、公園からも、空き地からも、土手からも、どこからも見つからない。見当たらない。
夜道を走り、段々と息が切れてくる頃。蛾が張り付いた街灯に足元を照らされている、1人の人間を見た。
その人も、空を見ている。まさかと思い、話しかけようとする… けど、いやいや流石に不審者か…!?
と理性で止め、そっと通り過ぎようとした。すると…
「…あの、すみません…月……ありません、よね」
その人は、私に話しかけてきた。
「え、えぇ…」
「貴方も…さっき探していませんでしたか?
どうして気づいたんですか?」
逆光で顔が見えない。けれど、どこか淡く光っているような気がした。
「私は…ベランダで夜景を眺めるのが趣味で。
月がないって気づいてから、どうしても気になってしまって…はは、困りましたよ」
そう説明すると、彼女は大きくこくりと頷いた。
「ステキな趣味ですね!
…月がない夜空って、どうです?」
と、空を見上げながら聞いてきた。
街灯の明かりが、彼女の横顔をぼんやり照らしている。
どう、ですか…か……難しい事を聞くな……
「月って、人にとって…大切なんでしょうか?」
「え?」
そう問われて、少し驚いてしまう。
「大事、というか……なんでしょうね」
私も空を見上げる。
「…やっぱり夜空には月がないと物足りないですよ。
星だって、街灯だって私達を照らしますけど… 月光に照らされるのが、いちばん好きなので」
彼女は黙って聞いていた。
「そうですか… 良かった。」
「ところで、貴方は…」
ふと視線を戻すと、その人はもういなかった。
代わりに、空には月が満ちていた。
私をやさしい月光が照らす。
そんな月夜だった。
絆
スペース取っときます(;;)
思いついたときに書く用……
たまには
「ねえ、たまにはさ…
…毎日がんばってるんだから、どっか行かない?」
貴方は笑う。
それが、貴方の口癖だった。
「…だから、大丈夫だってば。」
そう私は、呆れた顔でそちらへと振り向く。
貴方はいつもそうだった。
私より苦労しているくせに、私より賢いくせに、毎日毎日へらへら笑っては私の心配をする。
私以外にも友達がたくさんいるくせに、私の元にばっかり来る。
そんな、まるで天使のような貴方が……
好きだった。どうしようもなく。
……私のそんな想いも知らず、貴方はいつも、私を外へと連れ出した。
二人きりで行った海も、
学校を抜け出して行った遊園地も、
どれも夢みたいで。
かけがえのない想い出で。
「…ねえ。たまにはさ…
…現実のわたしにも、会ってあげたら?」
嫌だ。 嫌だ嫌だいやだ!
夢から醒めたら、私のことなんてすぐ忘れるくせに。
それでも、貴方はただ笑う。
目を見開く私なんて気にもせず、ただ、寂しそうに。