#56 夢と現実はかけ離れている。
どんなに願っても、夢は叶わない。
苦しい現実は変わらないのだ。
運命は変わらない。
神様は何もしてくれない。
人生は残酷はものだった。
彼は…亡くなった。
さっきまで話していた彼が倒れてから、
緊急で行った手術は失敗に終わった。
私が夢に見たことは現実にはならなかった。
もう、会えない。いないんだ…。
_____夢と現実
#55 今日も彼と病院で会う。
私は残り命を楽しむために、退院することになった。
もう治療法もないのだ。
でも、彼は私が余命宣告を受けていることを知らない。だから彼は、退院おめでとう、と明るく言っていた。
自分は諦めたように。
その日。彼は倒れた。
何度目かの発作。
発作を起こした時、「さよならだったらごめんね。幸せだよ」そう言った、彼の姿がずっと記憶にある。
さよなら、なんて言わないでよ。
私も、みんなも。人生には必ず、さよならがあるんだから。
___さよならは言わないで
#54 私は、死ぬまで光と闇の隙間で生きていくんだ、と
あの日知ってしまった。
#53 余命がわかっている私が、彼のおかげで末筆していたかのような私の人生が再び動き始めた。絶望していた自分が少し立ち上がることができた。
毎日、彼と病院で会うようになって、心の距離がどんどん縮まっていったと思う。
残りの時間が少ないことを、分かりながらも過ごす時間はすごく貴重で、幸せで長く感じたいけど、短い。そう思えた。
___距離
#52 彼と、話して、病室にもきてくれる日々。
私の方が発作は多くて、点滴をすることが多かった。
毎日、治療は苦しくて、発作も辛い。こんな苦痛な毎日を頑張っているのに。なのに、こんなことをしても意味がない。
助かる可能性はほとんどないのだ。
何もかもが嫌になって、悲しくて、涙が溢れ出した。
ベットの中で、泣いた。
その時、病室のドアが開く。ガラガラと音を立てて開くため、泣いているのに誰かがきたことがわかってしまった。
必死に泣く声を殺して、息をひそめる。
息が苦しくなって、被っていた布団から顔を出すと、少し離れたドアの前に彼が立っていた。
驚きのあまり、再び布団をかぶって顔を隠したが、泣いているところを見られた恥ずかしさと、来てくれた嬉しさの葛藤が激しい。発作じゃない、心臓の音が自分にも聞こえてくる。
もっと、泣いてしまいそうになる。
私は、何をやっているのだろう、と。
その姿を見て、ただ彼は私のベットに近づき、
「……泣かないで」そう優しく言ったのだった。
_____泣かないで