裏返し…裏返し…裏返しといえば…お好み焼き?
いや、でも、上手く裏返せるスキルは持ってない。
とゆーか、料理の才能が壊滅的だ。
まず、先端恐怖症で刃物恐怖症だから包丁が持てない。
そして、目分量が苦手なくせにレシピをちゃんと知ろうとしないから、濃いか薄いかはその日によって変わる。
そもそも、一生懸命自分が作ったものが、その日のうちに消費され消えていくことにも、一抹の寂しさを感じてしまう。
こうして書いた文章は、どこかにずっと残せるのに、どれだけ芸術的な完成形の料理でも、粉々に噛み砕かれ、胃の中で消化され消えるのだ。
…いや、消えないか。
別のものに姿を変え、また体から出てくる。
あの素晴らしい料理が、トイレで出会うアレになる訳だ。
でも、分かってる。
食べる自分が、食べてくれる誰かが、美味しいと喜んでくれれば、それが作った甲斐を感じさせてくれるだろう。
問題は、その領域に達する自分が想像出来ないということだ。
理由は上記の通り。
自慢話は、自信の無さの裏返し。
謙虚さも、自信の無さの裏返し。
…いや、これは裏返ってないか。
なら、謙虚さは、実は出来るという自信の裏返しか。
料理なんて無理とか言っときながら、実は一流レストランのシェフな私だったりして…な訳ないけど。
話がまとまらない。
まあそれはいつものことだが、「裏返し」ってテーマの正解は何なんだろう。
正解なんてないのかもしれないけど、まあ要するに言いたかったのは、お好み焼きを上手く裏返すのは至難の業だってこと。
最近食べてないからな、お好み焼き。
こんな、独り言のようなつぶやきが、誰かの目に届いてしまうなんて、まったく困ったアプリがあるもんだな。
あ…これは、なんて素晴らしいアプリなんだ、もっとたくさん読んで欲しい…の裏返し。
高所恐怖症の鳥はいないのかな。
幼い頃の飛行訓練に失敗して、トラウマになっている鳥は?
車で事故を起こして、二度とハンドルを握りたくないって人はいると思うけど、道で転んだからって歩くのをやめる人はいないか。
むしろ、しっかりと歩けるように精進するだろう。
鳥のように飛んでみたい、とは思わない。
生身で飛ぶのは思いのほか怖いと思う。
空には、人間が作り出した鋼鉄の乗り物だって飛んでいる。
バードストライクなんて、悲惨な最期は迎えたくない。
木の上でゆっくり休んでたら、突然鉄砲で撃たれるなんてリスクもあるし。
魚のように泳ぎたい、とも思わない。
海には、怖そうな生き物がいっぱいいるから。
そっちの怖い方になればいいという案もあるが、得てして彼らはグロテスクだったり悪者顔だったり。
釣られたり捕らえられたりして、食べられる運命ってのも受け入れがたい。
人間って臆病だな。いや、俺だけか。
ただ、すべての動物に対して羨ましいのは、学校や仕事がないってことかな。
もっと限定すれば、通勤、通学がないこと。
この酷暑や台風の中、出勤するのはホントにツライ。
それがない動物達は…いや、鳥だったら満員電車になんか乗らなくても飛んでいけるし、酷暑や台風でも、海の中なら大した被害はないか。
…鳥や魚も、悪くないかもな。
思えばあなたは、さよならを言う前に必ず、「次はいつ会える?」と聞いてきた。
時に即答し、時にはぐらかし、私から聞くことは無かった。
あなたが聞いてくれるから、途絶えずに私達は、次に会う約束を交わすことが出来た。
あなたが病に倒れ、病室でしか会えないようになって、あなたからこの質問をされることはなくなった。
デートではなくお見舞いになったから。
あなたが、少なからず負い目を感じているから、だろう。
病室のあなたは、日を追うごとに衰弱していくように見えた。
ある日、お見舞いに訪れた私の目の前で、彼が涙を見せた。
堪えきれずに溢れた涙だった。
私はすべてを悟り、彼に初めて問いかける。
「次はいつ会える?」
彼は俯いて、「もう会えないと思う」と答えた。
「…どうして?」
「分かるだろ。もう、お見舞いは終わりにしていいよ」
「…さよならなの?」
「うん。もう、次は無いと思う」
「じゃあ、さよならを言う前に約束して」
生まれ変わったら、私を探して。
どんな姿に生まれ変わっても、私を探して声をかけて。
私はあなただと気付くから。
私もあなたを探して生きるから。
「…分かった。もし僕を見つけたら、その人と一緒になって。たとえ見た目や性格が違っても、それはきっと僕だから」
数日後、彼の訃報を聞いた。
泣き崩れると思っていたが、心はすでに、生まれ変わったあなたを探すことで占められていたようだ。
思いのほか、冷静に受け止めることが出来た。
そして、三年後、あなたとは見た目も性格も違う、ある男性と知り合う。
その頃には、生まれ変わりなんてないのかも、と思い始めていたが、彼は私と会ってさよならを言う前に、必ず聞いてくる。
「次はいつ会える?」
私は答える。
「会えるなら、毎日でも」
いきなりの土砂降り。
ゲリラ豪雨ってやつだ。
避難も間に合わず、びしょ濡れになる。
最近こんなのが多いな。
空模様が急激に変わる。
誰かのハート。
心模様も急激に変わる。
あんなに好きだったアイドルが、誰かと熱愛報道された途端に、純愛が憎悪に変わったり。
長いものに巻かれろとばかり、イジメられる対象とは縁を切って、強きを頼って尻尾を振ったり。
人間の心模様は多彩で、メンドくさいほど複雑だ。
晴れのち曇り、ところにより雨や雪や雹、雷が鳴るくらいなら対応出来るけど、まったく自分が持ち合わせていない感情に出くわした時、人間の奥深さを思い知る。
その感情は行動を伴うから、理解不能なトラブルや事件を引き起こす。
でもそれはきっと、姿形を変え、誰もが心に抱えている。
もっと単純で良かったんだけどな。
青空みたいに心が晴れて、時に翳って、雨や雪のように悲しくなったりリラックスしたり、雹や雷のように怒りに任せて攻撃的になることだってある。
それくらいで良かった。分かりやすくて。
自分の心と相談して宥めるのも簡単そうだし。
まあ、インサイド・ヘッドも続編では4つも感情が増えたっていうし、この様々な感情を持ち合わせてるからこそ、数々の作品が生まれ、それに感銘を受けることが出来るんだろう。
あ、インサイド・ヘッド2はまだ観てないけど。
早く観て、感情を爆発させて、号泣したい。
噂では、その廃墟ビルの二階の廊下に、姿見ほどの大きさの鏡があって、深夜その前に立つと、背後に女性の霊が現れるという。
駆け出しの心霊YouTuberの俺は、この話に飛びついた。
早速、現場に向かう。
深夜二時。静まり返った廃墟ビル。
二階の廊下を探索すると、鏡はすぐに見つかった。
「これか…」
雰囲気を出すために、目を閉じてカメラを回しながら鏡の前に立ち、せーので目を開けることにした。
撮れ高が欲しいの半分、見てしまったらどうしようが半分。
覚悟を決めて、せーの、で目を開ける。
暗闇に目が慣れてくると、自分の姿がぼんやりと見えてきて、その右肩の上辺りに、明らかに女性の顔があることに気付く。
こちらを見て…微笑んでいる。
カメラにしっかりと収めたのを確認して、ダッシュで逃げた。
後日、動画をアップするとかなり反響があったが、この女性の顔を知っている気がする、というコメントがいくつかあり、もう一度、明るい時間に確認してきて欲しい、との要望に応えて、真昼の廃墟ビルに侵入して、あの鏡の場所へと向かった。
…あれ?
鏡があった場所の、廊下を挟んで反対側の壁に、大きなポスターが貼ってある。
そこには、ビールを片手に持ったビキニ姿の女性が、満面の笑みでポーズを取っていた。
街でもたまに見かけるポスターで、この女性にも見覚えがある。
…そーゆーことか。
落胆して、鏡の方を振り返る。
…鏡が、無かった。
薄汚れた壁があるばかり。
撤去された?この短期間に?なんでわざわざ鏡だけ?
クエスチョンマークだらけで、SNSに現状を伝える。
すると、以前このビルに凸したことがあるという人からコメントが。
「だって、噂の鏡があるのは三階の廊下だよ」