夜のうちに、すべての友達に別れを告げた。
この世にサヨナラする理由は、長く生きすぎたから。
マンションの屋上にリクライニングチェアを置いて、朝が来るのをじっと待つ。
日の出とともに、自分の体が砂と化して風に散りゆくのを感じる。
砂と化しても俺達の意識は残ると聞いているが、この世から肉体が消え去れば、夜な夜な出没する切り裂き魔の噂は消えるだろう。
願わくば、映画の中で描かれる俺達の紳士的でカッコいい姿はそのままで、こんなジャージ姿のおっさんが夜の公園で首筋に噛みついていたことなど、出来るだけ早く忘れてもらいたい。
他人を傷付ける食事にも罪悪感を覚えるほど、現代人は優しすぎる。他人のことを思いやってくれる。
献血なんて、そのイイ例だ。
こんな世界では、俺達は今までのようには生きていけない。
長く生きすぎたな。もう満足だよ。
ああ、日の出だ。
この美しい景色を目に焼き付けて、跡形もなく消えていこう。
その先のことは…分からない。
もし、復活してしまったら…また吉祥寺でタピオカでも売って…あ、それでは皆さん、さような…。
まずは、自分が幸せであること。
そのためには、家族皆が幸せでいること。
家族皆が幸せに過ごすには、周りの人達の生活も平穏で、町が平和であり、国が道を誤らず、世界が手を繋いでいること。
自然が牙を剥くのは仕方がないが、お手柔らかにお願いしといて、時にハラハラドキドキもしながら、最後には「無事で良かったね」と言い合えること。
抱負っていうよりHope。
この願いを心に抱いて、日々を過ごすことが今年の抱負かな。
あ、それと、新NISAの運用がうまくいきますように…これもHope。
新年早々、この寒空の下で避難を余儀なくされた人達がいる。
それは明日の自分達かもしれない。
正月気分でお酒飲んで浮かれてたって何も悪くないけど、こんな時の心構えぐらいは、いつでも発動出来るようにしとかないとな。俺達は、こんなことがいつでも無慈悲に起こり得る世界に生きてるんだから。
今頃、困っている人達を救うために、無数のヒーロー達が現地を走り回ってるんだろうな。笛を吹いて交通整理をしたり、ライフラインを確保したり、町を巡って市民の安否確認をしたり。大丈夫、俺達はきっとそんなたくさんの人達に守られてる。皆で生き残るために、誰もがヒーローとして活躍するチャンスなのかもしれない。
でも、もうあんな悲劇が起こりませんように。
悲しいだけの涙で、この国が埋め尽くされませんように。
物語は、ヒーローが救い出すエンディングで終わりますように。
「良いお年を」すでに迎えましたが、
これがまだ、良いお年になるかどーかは分からない。
今年が終わる頃に、
皆にまた「良いお年を」って言われながら、
ああ、今年は良いお年だったなーって思うんだろうな。
…いや、そー思いたいな。
思えばこの一年間は、自分を励ますことの多い日々だった。
この年になっても挫けそうになることはそれなりにあって、天命を知るより先に、今ある不安をどうにかして解消することに必死だった。
論破、なんて言葉に魅力を覚えて、誰かを打ち負かしたつもりになっても、虚しいのはいつも自分だってことに気付いた。
どれだけ正しく生きてたって、病魔や災難は突然やって来て、たくさんの人達の助けを借りなくちゃ乗り越えられない障壁があることを思い知らされた。
華やかな世界で活躍する人達も同じ人間で、いろんな事情を抱えて挫折してしまうこともあり、推しだった存在が突然姿を見せなくなってしまう現実があるんだと知った。
子供達が成長することは、少しずつ家族の形を変えていくことで、それが嬉しくもあり寂しくもあり、希望であったり不安であったり。
それでも家族でいられることが幸せなんだと思う。
過去は帰らず未来は読めず。
今を生きるしかない俺達は、
運命に立ち向かわなくてもいいから、
向き合い、それを受け入れることが大切なんだと思う。
受け入れて、ただ、
ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ。
頑張れなくなったら、
愚痴って弱音吐いて、もう一回頑張ってみる。
何が正しいかなんて人それぞれで、
頑張ってる自分は正義だと信じてるから、
1年間を振り返る最後の日に、
ヒーローここにあり、とスマホに書き留めて、
さて、猫とでも遊ぼうか。