夜のうちに、すべての友達に別れを告げた。
この世にサヨナラする理由は、長く生きすぎたから。
マンションの屋上にリクライニングチェアを置いて、朝が来るのをじっと待つ。
日の出とともに、自分の体が砂と化して風に散りゆくのを感じる。
砂と化しても俺達の意識は残ると聞いているが、この世から肉体が消え去れば、夜な夜な出没する切り裂き魔の噂は消えるだろう。
願わくば、映画の中で描かれる俺達の紳士的でカッコいい姿はそのままで、こんなジャージ姿のおっさんが夜の公園で首筋に噛みついていたことなど、出来るだけ早く忘れてもらいたい。
他人を傷付ける食事にも罪悪感を覚えるほど、現代人は優しすぎる。他人のことを思いやってくれる。
献血なんて、そのイイ例だ。
こんな世界では、俺達は今までのようには生きていけない。
長く生きすぎたな。もう満足だよ。
ああ、日の出だ。
この美しい景色を目に焼き付けて、跡形もなく消えていこう。
その先のことは…分からない。
もし、復活してしまったら…また吉祥寺でタピオカでも売って…あ、それでは皆さん、さような…。
1/3/2024, 2:40:01 PM