「良いお年を」すでに迎えましたが、
これがまだ、良いお年になるかどーかは分からない。
今年が終わる頃に、
皆にまた「良いお年を」って言われながら、
ああ、今年は良いお年だったなーって思うんだろうな。
…いや、そー思いたいな。
思えばこの一年間は、自分を励ますことの多い日々だった。
この年になっても挫けそうになることはそれなりにあって、天命を知るより先に、今ある不安をどうにかして解消することに必死だった。
論破、なんて言葉に魅力を覚えて、誰かを打ち負かしたつもりになっても、虚しいのはいつも自分だってことに気付いた。
どれだけ正しく生きてたって、病魔や災難は突然やって来て、たくさんの人達の助けを借りなくちゃ乗り越えられない障壁があることを思い知らされた。
華やかな世界で活躍する人達も同じ人間で、いろんな事情を抱えて挫折してしまうこともあり、推しだった存在が突然姿を見せなくなってしまう現実があるんだと知った。
子供達が成長することは、少しずつ家族の形を変えていくことで、それが嬉しくもあり寂しくもあり、希望であったり不安であったり。
それでも家族でいられることが幸せなんだと思う。
過去は帰らず未来は読めず。
今を生きるしかない俺達は、
運命に立ち向かわなくてもいいから、
向き合い、それを受け入れることが大切なんだと思う。
受け入れて、ただ、
ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ。
頑張れなくなったら、
愚痴って弱音吐いて、もう一回頑張ってみる。
何が正しいかなんて人それぞれで、
頑張ってる自分は正義だと信じてるから、
1年間を振り返る最後の日に、
ヒーローここにあり、とスマホに書き留めて、
さて、猫とでも遊ぼうか。
雪の降る夜。
リビングに流れるジムノペディ。
ゆっくりと時は流れ、
大切だった人達を思い出しながら、
長い夜は更けてゆく。
街は信号を点滅させて、生存を主張してる。
しんしんと降り積もる雪に埋もれてゆく、
マクドナルドの看板。
時折走る車のヘッドライトが、
消え入りそうな黄色のMを照らす。
巨大な廃墟と化したイオンの要塞と、
まばらな客が暖を取るガストの店内に、
明日の活気は思い描けない。
でも、必ず明日はやって来て、
僕達は変わらない営みを始めるんだ。
テーブルの上のみかんでお手玉をする娘達。
失敗して転げ落ちるみかんの行く先はきっと、
僕達が思い描かなかった未来だ。
どんな未来が待ち受けようと、僕達はそれを拾い上げて、
皮を剥いてひとつずつ経験してゆく。
ジムノペディから夜想曲へ。
ショパンが奏でる旋律には、
大切だった人達の笑顔を呼び起こす力がある。
大丈夫、自分を信じて。
その笑顔の誰かがそう言ってくれた。
僕は古いアルバムを閉じて、眠りにつく。
みかんは甘酸っぱくて、未来は味わい深いと教えてくれた。
もうすぐ今年も終わる。
昨日は仕事納め。今日から冬休み。
一年、よく頑張った。
嫌だったこととか、不安だったこと、たくさんあったな。
パニック障害は相変わらずだし、
意見の合わない上司とモメまくったし、
健康診断で肺の腫瘍が見つかったり、
大好きだったアイドルが解散したり、
そしてシメにはコロナ感染。
そんな諸々を全部受け止めて、
今年もイイ年だったなと思えるのは、
家族が誰一人として欠けず、
猫達も含めたフルメンバーで過ごしているから。
この冬休みの間に、一年が終わり、新しい年が生まれる。
オールリセットはされずとも、
嫌だったことや不安だったことなんかは、
一度リセットしてしまおう。
もしくは、この寒さで凍結してしまえばいい。
そしてまた新たに、運命と向き合おう。
すべてがうまくいく人生なんて望まないけど、
せめてこの冬休みが終わるまでは、
最高の一年を思い描いて過ごすのもアリかな。
この冬、心の中で上映される自作映画のタイトルは、
「素晴らしき哉、人生! 2024年版」ってところか。
オリジナル観てないけど…。
とりとめなんて無い、それもまた人生。
走馬灯のように、過去の記憶が蘇る。
学校帰りの土手。嫌いな先輩への愚痴。
転校していった友達の笑顔や、雨上がりの校庭。
昔、家で飼っていた猫がすり寄ってくる。
この子は、家の前の道で車に轢かれて死んだ。
夕暮れの田んぼ道。怪しげな風貌の男達に囲まれる。
「お金持ってる?」みぞおちに激しい痛み。
怒鳴りながら箒を振り回す母の姿。
あの時のヒーローはエプロンを付けてた。
降りしきる雨の中、道端に落ちてたミトンの手ぶくろ。
失くした子は、凍えそうな指先で捨て猫を抱き上げる。
この子は、家の前の道で車に轢かれて死んだ。
そして道端には、雨に濡れたミトンの手ぶくろ。
あれ、これはもしかして、ホントの走馬灯?
指先が冷たくて、感覚が失せてゆく。
私のミトンの手ぶくろはどこ…?