Ryu

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雪の降る夜。
リビングに流れるジムノペディ。
ゆっくりと時は流れ、
大切だった人達を思い出しながら、
長い夜は更けてゆく。

街は信号を点滅させて、生存を主張してる。
しんしんと降り積もる雪に埋もれてゆく、
マクドナルドの看板。
時折走る車のヘッドライトが、
消え入りそうな黄色のMを照らす。
巨大な廃墟と化したイオンの要塞と、
まばらな客が暖を取るガストの店内に、
明日の活気は思い描けない。
でも、必ず明日はやって来て、
僕達は変わらない営みを始めるんだ。

テーブルの上のみかんでお手玉をする娘達。
失敗して転げ落ちるみかんの行く先はきっと、
僕達が思い描かなかった未来だ。
どんな未来が待ち受けようと、僕達はそれを拾い上げて、
皮を剥いてひとつずつ経験してゆく。

ジムノペディから夜想曲へ。
ショパンが奏でる旋律には、
大切だった人達の笑顔を呼び起こす力がある。
大丈夫、自分を信じて。
その笑顔の誰かがそう言ってくれた。
僕は古いアルバムを閉じて、眠りにつく。

みかんは甘酸っぱくて、未来は味わい深いと教えてくれた。

12/29/2023, 6:29:20 PM