音のない世界に行きたい
音が私を興奮させてきた
音が私の睡眠を妨げる
ただ星を眺めたい
虫の音だけを聴いていたい
草原の上に寝転がって
たそがれたい
時間と心の余裕を持ちたい
『それでも不完全な僕を
信じてくれるのはなぜですか?』
"僕はやっぱり発達障害かも"
そう思い、自己嫌悪に陥る瞬間がある。
車の運転技能習得だ
他の人はどんどん
運転が出来るようになるのに
僕はまるで何もできない
半クラッチが苦手なのに
S字カーブは必ず1発で成功させられる
こんなにも技能という
技能ができないのに
どうして不完全な僕を
信じてくれるのだろう?
"自分に甘い"ではなく
"自分に弱い"
僕がずっと探していた言葉だ
あなたへ
見つけてくれてありがとう
絶望の雨
都市対抗野球の帰路
終電に間に合わせようと
必死で帰った
神宮球場の帰り客もいて
総武線の電車は溢れる
途中、人身事故で
予定よりも遅れていく
なんとか乗り込んだ
最寄りへの電車
あとはタクシーに乗ればいいだけ
ホームに降り立ち
駅舎を出た
前の客を乗せて出発する
タクシーの姿
白いズボン
傘を持っていない僕
外は猛烈な雨の音しか聞こえない
一瞬にして絶望の雨となった
この雨に佇みながら
帰り方を考える
タクシー会社に電話をかけるが
つながらない
歩くことにした
ビニール傘を買って
闇にかき消されながら
トラックに泥をはねられながら
ずぶ濡れのまま歩き続けた
日が変わって
1:10、家に着いた
あの絶望の雨は
一生、忘れない
見えない夜を知る
21:00、10分前。
真上の寮を出て、
階段を降りたらそこは職場
元気よく挨拶を交わす
夜が更けていくうちに
声は閉じていく
光も閉じていく
遠くに見えた橙の灯火も消え
ぼんやりと見えていた建物は
輪郭だけになった
こんなにも見えない夜を
知ったのは初めてだ
台車を引いて引いて
袋に包まれた手は
次第に皮がめくれ
一生懸命になった証が残る
そうして今日も朝が来た
朝日に照らされて
見えたものが見えなくなる
夜しか知らない世界がある
7万歩の世界が終わったのだ