小林涼太

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見えない夜を知る


21:00、10分前。
真上の寮を出て、
階段を降りたらそこは職場

元気よく挨拶を交わす

夜が更けていくうちに
声は閉じていく
光も閉じていく

遠くに見えた橙の灯火も消え
ぼんやりと見えていた建物は
輪郭だけになった

こんなにも見えない夜を
知ったのは初めてだ

台車を引いて引いて
袋に包まれた手は
次第に皮がめくれ

一生懸命になった証が残る

そうして今日も朝が来た

朝日に照らされて
見えたものが見えなくなる
夜しか知らない世界がある
7万歩の世界が終わったのだ

8/26/2024, 8:26:49 AM