上手くいかなくたっていい
放課後、本を読んでるといつものように彼が話しかけてきた。
「なぁ俺の悩み聞いてくれないか?」
「どうせいつもの話でしょ?聞き飽きたって」
能天気な彼の悩みと言えば恋愛の話しかない。
特に最近はその話題が多くて嫌になる…
そんな私を無視して彼が話し始める。
「もうすぐアイ先輩卒業しちゃうだろ?だから会えなくなる前に想いを伝えたくってさぁ…」
アイ先輩と言うのは、1学年上のマドンナで彼がずっと片想いしてる相手だ
「今まで話し掛ける事も出来なかったあんたが告白できるの?」
「それは言わないでくれよ!でも…超緊張するけど、振られるの覚悟で告白したいと思ってる。」
今まで見た事ないような真剣な表情だ。
「……さっさと告白しなよ」
「お前…!背中押してくれてありがとな!今から言ってくる!」
「え、今から??」
彼は凄いスピードで教室を飛び出して行った。
それから数十分経ったが、彼の告白の結果が気になって帰るに帰れなかった。
「あいつが結果報告しに来るとも限らないのにな…」
モヤモヤしながら待っていると、彼が帰ってきた。
彼を見た瞬間にわかった
あぁ、ダメだったんだ、と。
真っ赤なるほど泣き腫らして悔しそうな顔をしながら帰ってきた彼を見て私はなんと声をかけて良いのかわからなかった。
「振られても良いって思ってたはずなのに…いざ振られたらショックでさ。情けないよな」
「情けなくなんてない。チャレンジ出来ただけ凄いよ」
彼の背中を擦りながら、泣き止むまでずっと慰めてやった。
彼の事は尊敬してる
私はチャレンジも出来ない臆病者だから。
振られたって良いと思えないから。
そんな彼の熱量が私に向いたらどれ程良いか。
誰にも言えない秘密
誰にも言えない秘密ですか…?
私はメイドとして極力主様に隠し事を作らないようにしているのでそういった物は無いですね…ご期待に添えず申し訳ありません。
………私としては墓まで持っていく予定の秘密なのですが…主様がどうしてもと仰られるなら一つだけお話出来るかもしれません。
お聞きになられますか?
左様でございますか
ではお話させていただきます。
まず前提としてですが、昔私は孤児で色々ご縁がありまして主様に拾って頂き、今こうやって仕えさせて頂いております。
主様はこの認識だったかと思うのですが、実際は私は元々孤児ではなく両親と暮らしていたのです。
ある時私は主様を見かけ、どうにかお近付きになりたいと考えました。
どうアプローチするか様々な方法を考えたのですが、どの選択肢をとっても口煩い両親が邪魔で邪魔で仕方ないのです。
なので両親を墓に埋め、可哀想な孤児として主様に近付きました。
さて、如何でしたか?満足されましたか?
もちろん全て事実でございます。
この秘密は墓まで持っていく予定でしたので、予定通り今から死のうと思います。
ご安心ください、この秘密を聞いてしまった主様も一緒に連れてって差し上げます。
主様と同じ墓に入れるだなんて私は幸せ者ですね。
今日の心模様
「今日はみんなの気持ちを絵にしてみよう!保育園から帰ったらママに見せてあげようね」
先生にそう言われてみんながお絵描きをはじめた
うーん…正直保育園はあんまり楽しくない。友達もわがままな子ばっかりで嫌なんだもん。それに最近ママとパパがあんまり仲良くないのも知ってるんだ。だから今は最悪なきぶん。
でもそんな事絵にしたら心配されるし先生も困るだろうな。
…仕方ないから先生とママが喜んでくれそうな絵をかくことにした
とりあえず黄色と赤色と桃色のクレヨンを取って勢いよく丸を沢山かいた。
色で元気な感じも出せたしトゲトゲより丸の方が優しい子って感じで喜んで貰えそう。かんぺきだ
先生に見せてみると「晴太くんの感情がよく伝わってくる素敵な絵だね!」と喜んでくれた。
家に帰ってママに見せると「よく描けてるね〜晴太のいい所が詰まってるね」と褒めてくれた。
ぼくの本当の気持ちは"最悪"
絵に描いた偽物の気持ちは"元気で毎日が楽しい"
計算された無邪気さで喜んでくれる大人ってちょろい。こどもって大人が思ってるよりは賢いんだよ
計算された心模様
ハッピーエンド
彼に殺されちゃった私としてはバッドエンドなんだけど、ストーカーの私を殺せた彼からしたらこれはハッピーエンドだったのかな?
その代わり彼はこれからずっと私の事忘れられないだろうね!…ずっと彼の頭の中に居れるならハッピーエンドだったのかも!
あれ?でも彼からしたらバッドエンドなのかな?
お気に入り
僕、自分のことがお気に入りなんです。
自分の事をよくできた人間だとは思わないし、あまり成功体験もありません。
でもお気に入りです。
僕は何も出来ないけれど、存在してるだけで満足しています。お気に入りなので。
僕、1度気に入った物はずっと使い続けるんですよ
使い古した星柄の毛布をかけて寝て、使い古した子供用フォークでご飯を食べて、成長して履けなくなったお気に入りの靴を玄関に出しています。
生まれ育った実家もお気に入りなので当然住み続けています
新しい物は苦手です。毛布やフォークは実の所あまりお気に入りでは無いのかもしれません。失っても多分大丈夫です。
でも無くなってしまったら必然的に新しい物に置き換わります。新しい布団が、新しいフォークが来てしまうのです。
それがどうしても耐えられません。
外も嫌いです。常に新しくなっていくのでついて行けません。
こう考えてみると私が本当の意味でお気に入りな物なんて無いのかもしれません。ただ死ぬ程新しい物が嫌いなだけかもしれません。
僕は子供の頃の自分がお気に入りです。
鏡は新しい物を映すので嫌いです。