ラケル

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上手くいかなくたっていい


放課後、本を読んでるといつものように彼が話しかけてきた。

「なぁ俺の悩み聞いてくれないか?」
「どうせいつもの話でしょ?聞き飽きたって」

能天気な彼の悩みと言えば恋愛の話しかない。
特に最近はその話題が多くて嫌になる…
そんな私を無視して彼が話し始める。

「もうすぐアイ先輩卒業しちゃうだろ?だから会えなくなる前に想いを伝えたくってさぁ…」

アイ先輩と言うのは、1学年上のマドンナで彼がずっと片想いしてる相手だ

「今まで話し掛ける事も出来なかったあんたが告白できるの?」
「それは言わないでくれよ!でも…超緊張するけど、振られるの覚悟で告白したいと思ってる。」

今まで見た事ないような真剣な表情だ。

「……さっさと告白しなよ」
「お前…!背中押してくれてありがとな!今から言ってくる!」
「え、今から??」

彼は凄いスピードで教室を飛び出して行った。



それから数十分経ったが、彼の告白の結果が気になって帰るに帰れなかった。

「あいつが結果報告しに来るとも限らないのにな…」

モヤモヤしながら待っていると、彼が帰ってきた。
彼を見た瞬間にわかった
あぁ、ダメだったんだ、と。
真っ赤なるほど泣き腫らして悔しそうな顔をしながら帰ってきた彼を見て私はなんと声をかけて良いのかわからなかった。

「振られても良いって思ってたはずなのに…いざ振られたらショックでさ。情けないよな」
「情けなくなんてない。チャレンジ出来ただけ凄いよ」

彼の背中を擦りながら、泣き止むまでずっと慰めてやった。

彼の事は尊敬してる
私はチャレンジも出来ない臆病者だから。
振られたって良いと思えないから。

そんな彼の熱量が私に向いたらどれ程良いか。

8/9/2024, 11:19:26 AM