「行かないで」
あ、行っちゃう。
そう思った時にはもう遅くて。
自分を伝える言葉はあるのに声が出なくて。
追いかける足はあるのに一歩も動かせなくて。
いつも気付くのが遅くて、
結局自分の願いは言えないままで。
そんな自分が、嫌いだ。
「始まりはいつも」
最初は何もかもきらきらして見えた。
どんなに辛いことだと言われても盲目的に憧れた。
いつか自分も、と輝かしい姿を想像しては気分が高揚した。
でも、始めてみて実感する。
経験が浅い。知識がない。技術が拙い。
気持ちでは負けてません、なんてみんな思ってること。
いわば負け惜しみに近い言葉だ。
ほんとはわかってた。
実際はきらきらなんてものじゃないこと。
憧れだけで辛いことが辛くなくなるなんてないこと。
輝かしい姿になれる可能性はとてつもなく低いこと。
それでも、私はいつも思ってしまう。
「新しいことを始めてみたい」と。
「カーテン」
自分の部屋のカーテンが好き。
1人になりたい時、
それは外の世界との柔らかい隔たりを作ってくれるから。
壁のような頑丈な隔たりでもない。
ドアのような開けばすぐに外に繋がる隔たりでもない。
カーテンは、
外の音、光、温度、振動、全ての情報を緩く伝えてくれる。
外との繋がりを感じられるままに1人になれる。
私は、外の強い日光を柔らかい光に変えてくれる
そんなカーテンが好き。
「つかの間の休息」
私は、夜に飲み込まれてしまう。
夜に溶け込み、
夜の孤独さ、静寂さ、全てに共鳴するようになる。
夜に溶け込むことは、とても気力のいることだ。
下手すれば私は夜に飲み込まれたまま帰れなくなるから。
完全に飲み込まれてしまったら、もう朝には戻れない。
だから私はまた夜が来る前に
夜に飲み込まれないよう休憩する。
夜の最大の敵は、弱い気持ちを持った自分だから。
「力を込めて」
弱い自分を殴った。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
そうしないと生きるための一歩を出せなかった。
みんなの言う ”普通” になれなかった。
元気で明るくてみんなに優しい素の自分に戻れなかった。
あの時、私は弱い自分を殴ったのに手当をしなかった。
だから、弱い自分は血だらけで痣だらけのまま。
でも、これでいい。
こうするしかなかったから。これが最善策だったから。
「ごめんね、私のために居なくなってね」
そう心の中で唱えて
今日も私は弱い自分を心の奥に閉じこめる。