稲村 由比

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8/4/2025, 4:28:54 AM

【ぬるい炭酸と無口な君】

眩しい日差し 滲む汗
ただ流れる時間と シュワシュワと上がる泡

遠くからは
強く、そして弱く響く蝉の声
時雨の様に降り注ぐのに
ここ数日空からは何も落ちて来ない

私の心はこんなにも泣いているというのに

何に追われる訳でもなく
ただ時間に押し流されていく間に
どんどん消えて行く泡

ねぇ
何か話してよ

君を其処に残した儘
また季節は 私だけを巡らせて行く

7/13/2025, 4:07:23 AM

【風鈴の音】

軒下に下げた風鈴は
風が無いと役目を果たせない

時折そよぐ弱い空気の流れに少し短冊が揺れるが
舌が当たるまでは行かず
ただぶら下がっているだけの物体と化している

それでも

以前貴方が落書いた短冊を見るだけで
暑さが遠退く

頬を伝うのは
汗か
涙か

『リー…ン…』

不意に届いた涼しげな音
頭に響いた澄んだ音色

ふふ…

一度だけ届いた鈴の音に笑みを浮かべ
微風にそよぐだけの短冊を見つめていた

5/28/2025, 12:00:06 PM

【さらさら】

漸く手にした 幸せに
心が満ちて 頬も緩む

なのに
気付けば零れ落ちていた

掻き集めようと踠いても
指の隙間から消えて行く

待って
置いて行かないで

ねぇ…

さらさら
サラサラ

更々………

5/25/2025, 3:21:00 AM

【歌】

君の語らいは 歌のよう
心地好い鈴音が 情調を澄ませて行く

紡がれる言の葉に
満たされて行くのを感じる

歌うように語り
語るように歌う

そして今日もまた
君の詩に酔い痴れる

5/10/2025, 3:40:21 PM

【静かなる森へ】

深い意識 沈む思考
解離していく 揺蕩う体

包み込まれる フィトンチッド
唯浮かぶのは あの日の狂詩曲

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