「狭い部屋」
今日は部活の練習がいつもよりも大変だった。そんな日はなぜかテンションが高くなる。高校生として、青春の日々を彩りたいがための本能だろうか。
部活の疲れがとれるわけでもないのにコンビニに寄り道をして騒いで、駅に着くとそれぞれの帰り道へ別れていく。
友達といるときの賑やかさからは一変して、1人で歩く道は寂しい。どこかつらい気持ちを、1日の疲れがさらに沈めてくる。嫌な記憶が蘇ってくる。
しかし家に着くと、その気持ちは少し和らぐ。自分の部屋なら尚更で、いつでも温かく迎えてくれる。
私の部屋は自分の好きなものが詰め込まれていて、もうこれ以上ものを置く場所がないほど狭くなっている。きっと、この部屋に好感を抱かない人も多いはずだ。
でも私は好きが詰まったこの部屋ががいい。
このごちゃついて狭い部屋が、どんなものからも守ってくれる、どんな疲れも癒してくれる、私の安心できる場所。
「月に願いを」
あなたが好きなものなら、いくらでも答えられる。
食べることが好きで、特にチョコレートには目がない。ゲームも好きで、よく一緒に遊ぶよね。外出するときはいつもお気に入りの鞄を持っている。月のモチーフが綺麗で、大人っぽいあなたにぴったりだといつも思う。
あなたは月が何より好きだ。
夜が更けるとずっと空を見上げて、淡く光る月に魅了されているね。雨の日はとても寂しそうに空を見ているけれど、どこか遠くで輝いている月を心で感じ取っているのだろう、たまに穏やかに微笑む。
私はそんなあなたに、ずっと見惚れている。あなたが月を眺めて嬉しそうにしているとき、私はその姿を見て、ずっと願っている。
「どうか、この想いがいつか月よりも輝きますように。どうか、あなたに見てもらえますように」
月はずっとライバルだった。
しかし、願いを叶えてくれたのもまた、月だったようだ。あなたは月を背にして、私をじっと見つめている。なんて甘美な光景なのだろうか。
月が祝福をしてくれているようだ。私は感謝と新たな願いを込める。
「ありがとう。どうかこれからも私たちの幸せを照らしてくれますように。静かな夜の輝きであり続けてください」