日が沈んだ後も明るかったらいいのに。
そう夢見た人がいるから、電気は生まれたんだろうね。
最初にそう思ってくれた人のお陰で、私たちは夜に出歩けてる。
想像できることしか、人は叶えられないから。
あなたの隣にいる夢を、私ももう少しだけ。
『夢を見てたい』
ありがとうって満面の笑みであなたが抱きついてきて、腕のやり場ってやつにあたしは初めて困り切ってしまった。鼻先に香る慣れたコロンが頭の芯を痺れさせる。親が子どもにするよりも軽いハグ。ひとりになったあたしが多分いく日も反芻するだろうハグ。
心の中で願ってから思い知る。到底そうできない時にだけ、唱える言葉じゃないかと。コートの上からあたしはあなたを抱き締め返す。可笑しなあきらめみたいなものをこの腕にぎゅっと籠めた。
『ずっとこのまま』
短くした髪には、まわりじゅうみんな気付いてくれた。
「一気に切ったねえ」
「可愛い」
「短いのも似合ってるよ」
とってつけたような誉め言葉が空々しい。私が髪を切った理由など、たぶんクラスメイト全員知ってる。予想通りの後悔と共に、私は返事をする。
「ずっと切りたかったんだー。さっぱりしたよー」
曖昧に笑うクラスメイトの中で君と目が合う。
「寒くない?」
すっかり友達の顔が尋ねる。
寒いに決まってんだろ! 誰のせいだと思ってんだ大馬鹿野郎ッ!
なんてことを叫ぶ代わりに、
「寒ーい」
とおどけて、私は自席に着いた。
『寒さが身に染みて』
飲んだこと無いなんて、嘘でしょ?
会話が途切れた隙にすっかり赤くなった顔へ尋ねたら、半個室の薄暗い明かりの下でジョッキ片手にきみが笑った。
『20歳』
1月12日(月祝)午前 11:00~
東京都立産業貿易センター浜松町館2階南で開催の「第3回もじのイチ」に出展します。
こちらで書いてきた短編を再編し本にまとめました。無料配布もあります。入場無料です。
参加される方いらしたら、ご一緒に楽しみましょー!
【イ18】如月堂 日下めぐる名義
「ねえねえ、昔のアニメにこんなのなかった?」
鞄から取り出した円柱っぽいなにかを美咲が空に掲げる。
「先っぽにこういうモチーフ? が付いててさ、変身するやつ」
「あー」
手にしたなにかは黒い影になって、空に浮かぶ細く丸い縁に寄り添う。
「なによそれ」
「え、メガネケース」
えへへと振り向いたあなたの頭上に、輝く三日月。
『三日月』