1/22/2025, 12:13:08 PM
乗車を促す声音に階段を駆け上がったけれど、
電車のドアは無情にも目の前で閉まってしまった。
がらんとしたホームのベンチに座って、
私はポーチからハンドクリームを取り出した。
金木犀の描かれた、
でもちっとも金木犀っぽくない変な香りのクリーム。
少量でもベタベタして、しばらくスマホも触れない。
一度だけあなたがくれた、
秋の終わりのプレゼント。
私からは比較的長く使えるものを選んで
プレゼントしていた気がする。
マグカップとかボールペンとか栞とか。
好きそうなデザインの小物をレジへ持って行くと
店員さんが「贈り物ですか?」と訊いてくれた。
その問いに頷くだけで、
飛び上がりたいほど幸せだった。
もっと何か違うものを本当はあげたかった。
あんなに早く離れるなんて思ってもいなかった。
クリームの放つ変な匂いに、私はひとり咳をした。
『あなたへの贈り物』
1/21/2025, 10:48:54 AM
あなただけの羅針盤になりたかった。
烏滸がましいなんて思えないほど私は幼かった。
同じ空の下、同じ風に吹かれて、
同じところを目指し笑い合えていると信じていた。
現在地など測れず、
ただ先を目指すために、役に立てる道具で良かったのに。
ゆらゆらと揺れる針は、とっくに狂っていたのかな。
『羅針盤』
1/21/2025, 6:23:18 AM
明日に向かって歩く、でも
過去は決して無かったことにはならない。
過去は変えられないけど未来は変えられるんだから。
周りはみんなそんな風に言う。
それは嘘じゃないし、その通りなんだろうけど。
今は過去の積み重ねなんだから、
今の私を否定しないで。
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明日に向かって歩く、でも
過去を重ねた末の自分にこそ
未来があることを私は知ってる。
『明日に向かって歩く、でも』