終点
通勤電車は始発終点からの乗換。異動する前は乗換からの始発終点だった。会社まで約二時間弱だから経路を変えても同じ、もしくは乗り継ぎだけだとずっと立ったままか。それはイヤ。一番安い経絡推奨されるけれど、確実に二時間かかる。
会社に行く事が目的だから終点は会社。電車の事故等起きたらどの時点で戻れるか、乗り換えられるかが変わりどちらでもない時は、電気止まるなと内心思う。
帰りも同じ。いや、帰りの方が焦りも加わる。終点が変わったりするし、ゲンナリする。
自分自身の終点は何だろう?
目的の結果が望んだ終点とは限らず、スイッチバックして終点が先になる事もある。
生きている事の終点は死なのだろう。誰にでも等しくやってくる。自分と自覚しているものの終点だろうか。
終点って次へ行く為のポイント切替なのかもしれない。
切替の時にどれだけ満足しているのだろうか。ただの自己満足だとしても。
上手くいかなくたっていい
アホ!何でも出来て当たり前なら世の中平和だわ!
それにそんな事になったら誰の基準で世界ができる?
失敗ばかりしてグズグズしていたら、ペシっとたたかれた。
パワハラって知ってるか?爺様。暴力反対。
落ち込んでいたので声は低くなった。
失敗なんかして当たり前だ。成功する為に失敗するんだ。満足なんか妥協と一緒だ。お前が失敗したら、誰かが成功する。だったら、お前はその上を行け。
一生懸命に生きろ。お前は何がしたいんだ?
世界征服。
爺様はもう一回ペシっとたたいた。
そんなもん、上手くいかなくたっていい。あんなものつまらん。婆様がいればいい。家族が幸せならいい。疲れるぞ。世界征服した後は。失う怖さを知るからな。
蝶よ花よ
私の前に立っている方はとてもお怒りでいらしているのだけれどどうしてなのかが分からず。世話係の者に目線を向ける。
お嬢様。お手伝いでしたら私どもが参りますので、どうぞ旦那様のお近くにい…
その言葉が終わる前に食い気味に言われる。
こちらは手が足りないのは確かですが、足手まといになる方はいりません。
何を言っておられるのでしょうか?私は出来る事はお手伝いしたいと言っておりますのよ。
私、わがままを申し上げてはおりません。何もせずにいられないからこうして参りました。
殺伐として、混乱している物資仕分けを横目に見る。
私、蝶よ花よと育ちましたわ。でも、蝶や花とて食べないといけないのです。私、差配しますわ。どういう配置ですの?混乱してますわ。
先程よりも乱れてきたようですわ。こんな事で時間を使うのは無駄というもの。
私が家の女主人としての手腕をここで使わなければ。
そこ、仕分けに時間がかかりすぎです。あなたはあちらの方と連絡し合って、人数の把握、よろしくて?
あっけに取られながら、皆指示に従ってくれた。
後で世話係がいうにはまるで蝶が花の間を飛んでいるようだったと。働いていなかったらしいので仕事を増やしてあげました。我が家のモットーは率先ですの。お父様なぞ、泥だらけでお戻りでしたのに。
助け合いなさい。お母様がいつもおっしゃってましたわ。蝶よ花よと言われるのは何もない時だけ。
最初から決まってた
デキレースか。決定打を持たない我々のチームは見事にプレゼンに負けた。
帰る背中に依頼元の声が聞こえてきたような気がする。
予定通り…と。
こんな事はよくある話だ。と、いうか自分にはか。
半ば当て馬のような事ばかり。下の弟の為の下見ショッピングとか、あれ?もしかして、これが既定路線てか?
ふざけるなよ。自分がいないとそういう事出来ないだろう!負け惜しみか。
気晴らしに休みの日に神社仏閣を回る。不思議なものだ。敷地に入れば世界が変わる気がする。
太陽は誰かれ選ばす光を発しているし、静かだけれど何ものかがいる気配、それは自分だけの空間でそれを知らない誰かと共有しているのか、その世界が重なっているのからわからない。生まれる時にある程度自分で環境を選んで来ているのでは?ふと足を止め、鳥居の奥の本殿を見る。もし、そうならそれを自覚しないで文句を言う自分は勝手だな。それが修行?悩んでも仕方ないか。
この迷走と感情、感覚のズレは修行用に設定したのか。
最初から決まってた。いや、自分で決めてきたのなら答え合わせはこの世ではないんだな。
太陽
お天道さまに顔向け出来ない事するな!このアホが!
代々言われる言葉だ。
爺様、婆様、親父、お袋…弟、妹にも言われた。一族の中ではきっと俺が一番出来が悪い。確かに悪さはしている自覚はある。同じ悪さしている連中がお天道さまが見ている事を気にしないが俺は気にしている。わかっているから、苦しい。
爺様が、河原で寝転んでいる俺の横へヨッコラセと腰をおろす。正面の川の流れを見ている。
お前はわかってやっている。だから、平気な顔した裏では苦しいんだろう。
知っているか?お天道さまは、平等なんだ。悪人も良き人も同じように照らす。なんでだかわかるか?
皆、同じだからだ。生きとる。人の心が違うから違うように見える。自分の都合ではお天道さまはひからん。
お前の心の声に従え。うちは金持ちじゃない。だが、誰かに恥じる事もしとらん。好きにしろ。
俺の返事も聞かずに爺様はウンセっと立ち上がった。
婆様が昼飯だと呼んでいる。
お天道さま 太陽 は、それを見ているだけだ。
でも、優しい温かさだけは増している。