ちひろ

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12/26/2022, 5:37:31 PM

12月。クリスマス。酷く体調を崩して、1人寝ていた。
SNSではキラキラキラキラした女の子たちがたくさん写っている。
加工だろうがなんだろうがもうどうでもいい、ただ、キラキラキラキラ。美味しいご飯、スイーツ、高いシャンパン。
羨ましいな、と思っていたのはもう何年も前だった。でもその何年も前の自分は、クリスマスの24か25か、どっちかは絶対休ませてください!なんて職場に頼み込んでた自分がいた。ちゃんと、キラキラしてた。
今年の私は布団に包まって、でもそのことに安堵している。
仕事休んじゃったなぁ。けどよかった。穏やかに幸せを重ねるカップルを見なくて済む。

以前同じ具合で体を壊したことがある。そのときは結果救急車で運ばれ、そのまま緊急入院してしまった。
ああ、今回はどうなるんだろう。もう管に繋がれまくって痛みを耐えるのは嫌だ。まして、前回は毎日見舞いにきてもらったけど、今年は1人なのか…。
救急車は呼べるだろうか?呼んだところで意識を失っても大丈夫なように、鍵は開けておかなきゃいけないって聞いたな…

不安が増してふと、友達に戻ったその人に連絡してみる。

ねぇ、あのときと同じ具合でいま体調崩したの。
うわー、嫌だねぇ…

ねぇ。嫌だねぇ。あたしたちこんなにも離れていたんだねぇ。
仕事を即切り上げて血相を変えて飛んで帰ってきてくれたあなたはもういない。
手を握り、なにができるか聞き続け、どうしようもなく救急車を呼んで、それでも意識の薄れていくあたしに声をかけ続けてくれたあなたはもういないんだね。

クリスマスだし、むしろ仕事してればよかったのかな、なんて考え始めた自分に、心から驚愕した。



*変わらないものはない

12/20/2022, 3:44:30 PM


暗く湿ったラブホテルの、開ききらない窓をできるだけ開けて外を眺める。
いま隣にいる男は小一時間前に対価を払い、ひとしきり私の体を貪ったあと眠りに落ちていた。
高らかに響くいびきに呆れ混じりのため息が漏れる。
馬鹿馬鹿しい。残りの時間目一杯寝かせとこうかな。

日曜日の午後。憂鬱な時間。そろそろまた鳴るかなぁ。日曜日はやっぱり一日に何度も鳴るなぁ。
ただでさえ寝ている男の発する音がやかましいというのに、さらに気持ちは落ちていく。

…きた。

低く鳴り響くウエディングベルの音。
厚みはあるけれどどこか軽やかに鐘の音を遠くまで響かせ、ここに幸せなカップルがいますよと主張している。

なんでチャペル付きのホテルの近くにラブホがあるのよ…

抜けるような青空の下、ハレの日の装いで、泣いたり笑ったり人生最上級の幸せを味わってる人間が今日だけで何組もいるというのに。裸のまま、汚れた身体もそのままにしてるのも手伝って、自分だけか世界から切り取られる感覚に陥っていく。
テーブルに乱雑に置かれた金。しわくちゃのシーツ。山盛りの灰皿。

…こんな仕事しといて幸せな結婚とか、ねぇ…
私という存在をゆっくりとかき消すように、綺麗なベルの音は何度も鳴り響いていた。



*ベルの音

12/19/2022, 3:50:20 PM


触れてくれる手は優しい。手も肌も温かくて心地いい。とろけそうでとてつもない幸福感。
こんなに君との距離はゼロに等しくて、1番近くにいて心から満たされて、これ以上などないはずなのに。
セックスしてるときの君のことしかよく知らないのは、
やっぱりとても寂しい。


*寂しさ

12/18/2022, 3:39:13 PM


_ねえ、結局どこ行く?
_んー、寒い…
_どっか出かけるって約束だったじゃん
_んー、まだ暗いし…
_もう9時だから!

日が当たる部屋にしたいと散々駄々を捏ねたのはこのせいなのに!やっぱり結局起きてくれない。

ねえ、どこか一緒に手を繋いでぶらつきたいだけなのに。

「お出掛けは次の休みにして、寒いねぇ寒いねぇって布団でだらだら2人でぬくぬく過ごすのもありじゃない?」

可愛く笑った君と、昨日わざわざ増やしたお布団。この状況では何も言えなくなる私の癖も、君は見抜いているよね。

*冬は一緒に