『雪原の先へ』
学生時代、スキー合宿に参加したことがある。
板もウェアもレンタルで、一泊二日で滑れるようになろう!という、やや無茶なものだった。
なぜか運動音痴に見られがちな私だが、子供の頃から運動神経には自信があったので、やる気満々で挑んだ。
結果はあっさりと滑れるようになり、初心者コースでは物足りなくなった私は、意気揚々と中級者コースへ。
そこでも難なく滑れてしまったところ、他の合宿参加者たちやコーチ役の人に上級者コースへ連れて行かれた。
まあ、滑れたことは滑れた。
怖かったけど。
ここで終わっていればよかった。
この後、林間コースへと連れ出された私は、カーブを曲がりきれずに柵の外へ……
その時の風景を、今でも覚えている。
突然開けた視界。
なにもない、ただ真っ白な世界。
雪原のその先へ、私は飛んだのだ。
呆然としていたのは多分一瞬で、頭から雪の中へ突っ込んだ。
すぐに引っ張り出されたから助かったけど、あのままだったら窒息していただろうなぁ。
『白い吐息』
吐息を白い薔薇に変えて、部屋中に飾って想い人に逢えない淋しさを慰める。
そんなことを歌った曲があった。
しんと冷えた部屋の中で、ほう、とついた溜め息が白い薔薇に変わる。
それを手のひらに乗せて、窓辺や戸棚の上にひとつずつ飾る女性。
とても美しい情景だと思ったけれど、飾られた薔薇が多ければ多いほど、曲の主人公は想い人に蔑ろにされ、独り淋しい日を過ごしているのだ。
部屋中が薔薇でいっぱいになった時、彼女は何を思うのだろう。
――何が、起こるのだろう。
静かな別れか、
それとも薔薇を真紅に変える何か、か。
うん、まあ、不倫の歌でもあったんだよね。
『きらめく街並み』
十二月に入ると、街のあちこちが美しく飾りつけられる。
眼福眼福と歩きながら眺めているけれど、そういった派手さのない、ささやかに飾りつけられた民家も好きだ。
住人の為人が見えるような気がする。
見て!見て!と強く自己主張しているもの。
あの、えっと、そういうつもりはないんです、ただちょっと、いつもより少しだけオシャレにしたいなって
という感じのもの。
特にはそういうのに興味はないんですけどね、まあ、強いて言えば、ここのところね、ココ、これがちょっとしたこだわりでね、と一点に絞ったもの。などなど。
そんな街並みが微笑ましい時期。
『秘密の手紙』
秘かに仕舞われていた
密書に認められたソレ
のぞまぬ内容に腹立ち
手でカサリと握り潰す
紙の古びた匂いがした
『冬の足音』
師走に入ってもまだ少し暖かかったのが、昨日今日とで急に寒くなった。
昨夜は雹が降った。
カタンコトン、パラパラパラ。
雨予報が出ていたけれど、これは雨の音じゃないなと外に出てみたら、黒い道路に白い真珠みたいなものが無数に転がっていた。
手のひらに乗せても、ちっとも溶けない。
豆撒きみたいに道路に投げて、また部屋に戻った。
カタンコトン、パラパラパラ。
雨音よりも硬質で、冷えた音がした。