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9/21/2025, 3:02:52 AM

『既読がつかないメッセージ』

みんなの投稿を見ていたら、
他のお題の時よりも闇が濃い。

9/18/2025, 8:36:22 AM

『靴紐』

靴の踵を3回鳴らすと家へ帰れるのは、『オズの魔法使い』。
美しいガラスの靴が本人確認となって王子様と結婚するのは、『シンデレラ』。

西洋では、靴は幸せを運ぶものなのだろうか。
ホテルやショップでは、まず客の足元を見て判断するとも聞く。

長らく和装で暮らしていた日本人のDNAを持つ私には、ちょっとピンとこない。
「お洒落は足元から」なんて言葉も浸透しているが、きっと根本的なところはわかっていないように思う――土足文化で裸足を忌避する肌感覚までは。

昔、駅にいた靴磨き職人のおじいさんに聞いたことがある。

「不思議とね、磨き上げた後、靴紐を結び直す瞬間にその人の余命がわかることが、稀にある」と。

その余命が当たっていたがどうかどうやって確かめるのか、なんて野暮なことは聞かなかった。
ただ「そうなんだ」と頷いただけ。
あの僅か数十センチの靴紐にそんな不思議が隠されていたとはねぇ、と。

9/17/2025, 9:40:59 AM

『答えは、まだ』

ずっと続く暑さのせいで、本を読んでいても頭にスッと入ってこない。
読んでいるつもりでも、気づくと同じページをぼーっと眺めていたりする。

普段ならそれでもいいのだけれど、図書館から借りてきた本だと事情が変わる。
返却期間内に読み終わらないのだ。
延長できるものは延長するが、次の予約が入っているものはなんとしても期限までに返さなくては、と焦ってしまう。

一度返して、また予約を入れ直して、順番が回ってくるのを待つ。
――ということも、もちろんする。

するけど、しかし。
私はミステリ好きなのだ。
読んでいる本の八割はミステリだと言っていい。
途中まで読んだミステリの、犯人が誰か動機は何かトリックはどうやったのかを分からないまま、数週間から数ヶ月待つことのモヤモヤときたら……

もちろん悪いのは私である。
決められた期限内に読み終わらなかったのは、私なのだから。

そうして期限ギリギリまで足掻きに足掻く。
今日が期限のこの本を、仕事終わりに図書館の返却ポストに入れなくては。
ああ、もうじき昼休みが終わる。
まだ、犯人の名前が出でこない。
私は自分で推理して楽しむタイプじゃないんだ。早く答え合わせをしてほしい。
でも、最後のページだけ見るなんてことしたくない。
ああ、あと5分したら洗面所に行って歯磨きしなくちゃ。
でも、この謎の答えは、まだ――

9/16/2025, 7:51:24 AM

『センチメンタル・ジャーニー』

かつて、そう平成の半ば頃まで。
女の一人旅は、何かワケありではないか、失恋して死に場所を求めているのではないかなどと、邪推され嫌われていたものだった。

ホテルも旅館も女性の一人客は泊めてもらえず、純粋に旅を楽しみたいだけだと言うと、オカシナものでも見るような目で見られ、変人扱いされたものだ。

それを思うと、今は楽になった。

「おひとり様」という言葉が流行り、旅も食事もカラオケも一人で楽しむことができるようになった。

そもそも、失恋したら死ぬなんて、命が幾つあっても足りないじゃないか。
たとえ失恋旅行をしたとしても、「旅行して癒されて美味しいものいっぱい食べてスッキリしよう!」という感覚だ、今なら。

だから、そんなに何度も様子を見に来ないでほしいです、宿の人。
私は死んだりしないし、なんなら失恋もしていない。
仕事で疲れてリフレッシュするためにふらっと来ただけだから。

そう思いながら、鄙びた旅館の、テーブルの上に並べられた郷土料理に手を付けた。

9/15/2025, 9:49:05 AM

『君と見上げる月…🌙』

宴の喧騒が、閉められた窓越しに聞こえる。

そっと抜け出した小さなベランダで、なんとはなしに月を見上げる。
細く折れそうな、弱々しい三日月。

まだ昼間の暑さが抜けきらない温い空気は湿度を含んでいて、そのせいか月も星もぼやけて見える。

「今日はありがとう」

追いかけてきたアナタが言う。
その薬指には、今日嵌められたばかりの銀の指輪が光ってる。

なにも話したくない私は、ただ黙って空を見続ける。

君と見上げる月は、これが最後。

ポツリポツリとなにか言っていたアナタが、少し淋しそうに部屋の中へと戻っていった。

湿度が高いな。
星も夜景も、やけにぼやける。
頬にもなにか流れてきた。
こんなにも滲む月なんて、もう二度と見るものか。

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