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『君と見上げる月…🌙』

宴の喧騒が、閉められた窓越しに聞こえる。

そっと抜け出した小さなベランダで、なんとはなしに月を見上げる。
細く折れそうな、弱々しい三日月。

まだ昼間の暑さが抜けきらない温い空気は湿度を含んでいて、そのせいか月も星もぼやけて見える。

「今日はありがとう」

追いかけてきたアナタが言う。
その薬指には、今日嵌められたばかりの銀の指輪が光ってる。

なにも話したくない私は、ただ黙って空を見続ける。

君と見上げる月は、これが最後。

ポツリポツリとなにか言っていたアナタが、少し淋しそうに部屋の中へと戻っていった。

湿度が高いな。
星も夜景も、やけにぼやける。
頬にもなにか流れてきた。
こんなにも滲む月なんて、もう二度と見るものか。

9/15/2025, 9:49:05 AM