君と見た景色は、お生憎様、世情に恵まれませんでしたね。
不要不急、不要不急、不要不急……。これが常套句となっていた、コロナ禍のお付き合いでした。
緊急事態宣言が初めて出たのが四月。最初は首都圏と一部都道府県のみだったのが、全国に広がっていって、五月上旬までの予定……かと思ったら、延長に次ぐ延長。
うがい手洗い・マスク。そのマスクが、アベノマスクと揶揄されて、「アベノマスクは、まだこないのか」とLINEで雑談した日々。
星野源の「うちで踊ろう」に合わせて、首相がお茶を飲んだり、テレビを見てくつろぐ姿を撮影した動画がアップされ、炎上した日々。まだTwitterと呼ばれていた日々、タイムラインは怒りと嘆きに溢れていて、コロナによる失職と減給の沈み込みが垣間見えたネット。
消毒、換気、手洗い、加湿。……密。
あの頃はお互い神経を使いましたね。
私は2.5回、コロナになりました。0.5の部分は、疑陽性みたいなものです。医療崩壊があった頃に罹りまして。とこもかしこも予約電話がつながらず……。ああ、脱線。失礼しました。
ともかく、これからは、どこかへ行きましょう。
どことは明確に決まっていないけど、生きましょう。
それだけは決まっています。
手を繋いで。
ついこの間まで、世界は一つの輪になるように手を繋いで「へいわー」と言っていたと思う。
多様性とか、包括的とか、DEIとか。
けど、昨今のトランプの戦況を見てみるに、せっかく手を繋いだのに、それをちょん切っているようだ。
手を繋ぐまでは協力的だったけど、繋いだままとなると話は別。ずっと握りしめると手に汗握る。汗をかきっぱなしだと汗臭くなる。不愉快。でもみんな、そのことを隠したまま、顔に笑みの仮面をつけて、ニコニコ。
それが無理が祟った。なかなかのエリート層はそのほうが良いと思っている。けど、国連加盟国全員がそう思っていたわけではない。
こちらはこちらでやりますから、あとのことは知りませんと。
アメリカの方針転換に対して「むっ」となるのは致し方ない。そういえば、GHQだってそんなことをやっていたではないか。日本占領中に財閥解体をしようとしたのに、朝鮮戦争が勃発したので方針転換。通称逆ルート。
4年後、また大統領が代われば、「なかまー」ってなるのかな。そうはならないだろうと思うのだが……。
経済制裁、したままだよね?
どこ?
ひたち車窓からぼーっと茨城の田舎を見ていたら、消防車が見えた。すぐ後ろには白い車……救急車が。消防車と救急車が両方とも出動している。
旅行者は、列車先頭から見て左側の窓際の席に座っていた。赤白の車両は左へ逃げていくような、遠ざかる走行になる。少しのあいだ並走したが、こちらは特急なので、すれ違い通信のように後ろへ。
消防車と救急車が続けざまに出動要請か……。
旅行者はどっか行った景色を考える人になった。
消防車の同席が引っかかったのだ。山の緑の目立つ車窓では、遠くもよく見渡せる。別段煙などは見当たらなかった。
もしかすると、救援者の「火事ですか、救急ですか」もなく、ただ電話だけされて出動したのだろうか。と思ったりした。
救急車は必須だとしても、その場合消防車は結構ついでだ。サイレン代わりとして呼んだのだろうか。遮音性の高い特急では、外の世界は分からない。場所だけ分かってもすべてを把握することはできない。その場に行ってみないと経験にならない。
日常生活が閉じていくように、緊急性も閉じられて密閉されて。ジップロックに入れて冷凍庫へ。
そうなる前に、無事でいてくれればいいけど。
大好きな雪が降ったからと、子供たちは歓喜の顔をしている。
一方親は曇り顔だ。これは降り積もる香りがする。交通網が麻痺しないか否か。先行き不透明な将来に重ねて、大粒の雪が解けて雨になりやしないか。そればかり考えている。
結果は昼になるまでお預けだ。
※晴れました。
叶わぬ夢はどこに落ちているのかな。
この場合、自分に限定する必要はない。名の知らぬ人間のモノでも構わない。そうでなければ四つ葉のクローバーなんて見つけられないように、可能性を広げる条件に拡幅する。
緑地帯の歩行者用道路を歩いていた。
このまま進めば荒川の河川敷へたどり着く。昔は水害の氾濫で荒れ狂ったことが由来の荒川。と聞き及んだ。
歩いている少年以外、誰もいない。歩行者用の名折れである。誰もいないし誰もすれ違わない。
緑園化された花園を見やった。まだ本格的な春は来ていない。でも分かるのだ。何処となく花の香りが、鼻でキャッチしたから。
幻香ではない。今に見てろと。誰かが零した叶わぬ夢。それを糧にして、一ヶ月もしないうちに、春は現れるはずだ。