とりとめのない話をしよう。
ついさっき仕入れたもので恐縮だが、僕は夜の電車内で通勤電車に揉まれていた。
もう冬だ。昼と夜の寒暖差もそこまで感じない冬だ。
見渡すと、だいたいの人がもっふりとしたコートを着込んでいる。
手袋をしている人は少なめ。
まあ、スマホをいじくりまくってるから、弊害にしかならないだろうな。
もちろんマフラーをする人もある程度は……と目を向けると、ある人の首元に視線が絡まった。
たぶんマフラーをしていたと思うのだが、そのねじりの布に絡まるように、「とあるもの」が飛び出ていた。
ほら、なんというんだ?
服の値札とかについている、透明で細いチューブの、「くりん」と曲がったプラスチックの。
それを見つけた。
僕はなんというか、もしかして新品のマフラーなのか。と思った。アレが単体で絡まることなんてありえないから、もしかしてマフラーの中に値札が?
いや、でも……
その人の年齢は高齢に片足突っ込んでいるようなもんだ。視線が絡まると思考も絡まってしまう。
新種のキノコでも見つけた気分になった。
その人は、次の駅で降りていった。
特に気づく様子もなく、そして「あの……」と声を掛けるものもいない。遠ざかる謎……、男性。
はて、でかい埃と間違えたのかな。
冥王星が「風邪」をひいて軌道がおかしくなったから、太陽系から仲間はずれになってしまった。
こんなもの、ほんの数日のものだ。病気が治れば元通りになる。
しばらく経って、太陽系に戻ってみるが、状況は戻らない。
どうやら冥王星がそれに属する基準を決めているのは総意ではなく、一つの星の意見。それも星に住んでいる生物の、一種族のみであると知った。
しかし、それを知ったところで冥王星は怒らなかった。
その星と冥王星の距離はかけ離れていて、少なくとも雲泥の差の、四百倍は離れている。
それを踏まえて彼らを見ると、仲間はずれにされていないと知った。一つの星が、この太陽系の長を……裸の大将になっているのだ。
それなら気に留める必要なんかないか。
冥王星は、他とは違う自分の軌道に誇りを持ち、他の惑星と同様に回ることにした。
集団に属すとは、このようなものだ。
雪を待つ駅のホームに、しゃがれ声の列車がやって来た。
昭和初期の時代から活躍し続けた鉄道である。
今のように電気で自走するような車両ではない。
墨の泥で塗り固めたような、黒々とした外装で、煙突からもくもくと、白い煙を吐き出し続けている。
動くこと自体稀有に近い様子だが、それは外装だけの見た目のみである。
石炭ではなくディーゼルエンジンで動いている。このモクモクとした煙も、実はハリボテ。ただの水蒸気である。
それでも、今の世の中では、電気代がかかることが特権扱いとなっているため、エンジンも車体も馬鹿にされている。
田舎のホームである。雪のカーペットはまだ敷設されていないが、寒さだけは一人前である。
都会へゆくための唯一の足である。
普通なら閑古鳥が鳴き喚いている石段のホームだが、今宵は大多数が待ち望んでいる。
待望の列車が来、大多数が乗り込む。
猶予のある時間が過ぎ、山を越えるような嘶ける唸り声を上げて、古びた列車はホームから発車した。
ゆっくりと、スピードを上げて巣立っていく。
ホームに一匹残し、列車は去っていく。
大多数の正体は寒さに弱い人間であり、一匹のそれは寒さに強いペンギンである。
ペンギンは、雪を待つ駅の駅員だった。
明日になれば、この地方には雪が降るという。
大豪雪だと。天気予報は真っ赤な警告を出し、ゴチャついた日本語ばかりを発している。
古い時代からすれば、壊れたラジオ。
周波数を間違えて今さら玉音放送をしている感がする。
ペンギンの駅員は、ゆく列車を見送るように、ちょっと短めな手で帽子の庇を改めた。
そして、ペタンペタンと可愛げな足音で寂しげに歩いていく。駅員室に戻る頃には、ホームは今年の雪を知るようになる。
行く列車があれば来る列車がある。
誰も知らない、降り積もるホームに先ほどの列車が帰ってきた。
誰も降りない……と思いきや、乗客一匹を降ろした。
「きゅう」
白いアザラシは、ザリザリと、十センチの雪をかき分け、ペンギンのところにやって来た。
「今年も来たのか」
「きゅう!」
白いアザラシは元気よく返事をした。
雪上になりゆくホームを、雪に強いペンギンらは腹ばいでスイスイ滑っていく。
シンシンと降り積もるなか、二匹は雪上家である駅員室にて夜を過ごす。
一方は寂しくなんかねぇぞと笑い酒を飲み、一方は今年の冬こそかまくらを作って過ごしたいと、懸命に鳴いているらしい。
とある地方で「イルミネーション」をしている所がある。それも2軒。
どちらも寒さがめっきり深まった冬の夜になると、外壁を彩るように、LEDライトの自宅仕様のイルミネーションをするようになる。夏などはしない。
僕としては、イルミネーションは電気代があり得ないほどかかると思うのだが、たぶんどちらも富裕層なのだろう。電気代など気にしたことはない。
ワンボックスカーとか、ゴツい高級車が軒先に停車しているし、一方は野球ベースを改良した物がある。
野球少年を飼っているのだ。
金曜日の夜、夜が深まったその道を通ると、軒先の野球ベースに立って三振しまくっている少年を見ることができる。通行人には見もしない、真剣だ。ブレない目を持っているな、と思っている。
イルミネーションの話だった。
どうやらどちらも我が子を喜ばせたいからそうするらしい。
一方は、外壁にツリーの形を彩っている。
上から下へと、光の流れを汲んでいる。本当はLEDライトの網が張り巡らされていて、ただの点滅だが、間近で見ないとそのことには気づけないものだった。
もう一つは色とりどりが光っている。
こちらは単純な作りだ。
ポーチの天井にLEDライトの網が設置されて、ただランダムに点滅されているだけ。違うのは、こちらのほうが色使いが多いということ。
赤青黄緑紫……そんなものが満天の星空のように光っている。
そういえば深夜も光っているのだろうか。
その辺は確認してないが、光っていそうな感じがする。
愛を注いでいたら、ハートが増えていった。
恋愛の話ではなく、愛を注ぐ対象はこのアプリに、である。
さっき見たら、1876とかだった。
七月くらいから始めたから、半年?
わからん。
毎日新聞のように、毎日書いてたらこの数字普通に増えるやつだからな。毎日10個が固定だから、小数点を左に一つずらせば、だいたいのアプリ起動日数がわかるってなんか良いよね。
最初の頃は、1日に増えるハート数のことを数えていた。増えていく演出とか、なんかそう、嬉しくてな。
学生時代の恋愛みたいに、毎日が熱かったのだ。
今は「すん」となってる。
もっと早く増えてくれないか、と思ったりもしている。
というか、書いたらもう、増えていく演出を見ずに、お気に入りの人の投稿を見ていく、みたいになった。
ときどき20くらい増えることがあるのだが、その時は「バグったんだろう」と思っている。時折反映が一日二日合算するみたいなのだ。だから、一気に増えた気になる。
数字に固執する人は、このアプリにはいないと思うが、もしかしたらいるかも知れない。
そういう人は「継続」というのを見下しているのだろう。数字より継続が大事。他人なんて、気にしてもムダなのだ。
まあ、いうて。
全部で7日くらい、書くのしくったんだよね。
夜7時にお題が更新されるじゃん。
で、僕社会人だからさ。
夜6時台に夜の通勤ラッシュがやばいと、書けないということだ。
だから、とりあえずお題をとっとこーとして、あとで書く、ということをしている。
それもできないことがある。できないというか「あっ、忘れた!」となっている。
仕方ない、人生長いんだからさ……。ほら、通勤電車を見てみなよ、数分で次のが来るぜ。
それに乗れば良いのよ。
といって、適当にサボっている。
このまま書いていたら、年末にありそうな振り返りのお題の時に書くことが無くなるので、これにて解散することにする。