東屋に2人で座った。
彼の言動1つ1つに傷ついていた。
なのに、曖昧な態度をとった。
彼と終わりにしたい気持ちと
彼と始まりたい気持ちで揺れ動いていた。
彼は知らない。
ただ静かだった。
私が今日1日楽しんでいたと思ってるだろう。
熱っぽい頬を風が撫でた。
じっと雲を見ていた。
散々なことを言って立ち去りたい
でも「綺麗だね」って笑いかけたい
草は赤く燃やされて叫びを上げている。
心はただそれを傍観していた。
#たそがれ
ホットケーキにクリームをたっぷりかけた。
その上にカラフルなチョコスプレーをかけると、
息を呑んでいたみんなから、小さな歓声があがった。
薄い布を隔てて、虫の声と夜風が入る。
私達は表情で、めいいっぱい感想を表した。
お腹いっぱいになったら、
外へ出て空を見上げながら歩いた。
星がいくつも流れた。
きっと明日も、楽しくなるんだろう。
パンパンのふくらはぎと靴擦れまでも、
楽しいんだから。
#きっと明日も
そして、部屋は静寂に包まれた。
ふいに、くすっとした笑い声が聞こえて
布団の間を渡っていく。
「もう寝よう。明日も早いんだよ」
ちょっと大きな声が聞こえる。
「はぁい」
小さく返事をして、
静寂のくすぐったさに寝返りを打つ。
#静寂に包まれた部屋
貸した漫画、案外早く返しに来てくれた。
初めて待ち合わせをした公園で、待ち合わせをした。
他愛も無い話を、途切れず話した。
必死にご飯を食べる鳥を見て笑った。
笑い声に悲しさが入らないように努めた。
あぁここ一緒にお弁当食べたな
すごく褒めてくれた
ここは就職で悩んでる彼が座ってた
あのときは強い言い方をしてしまった
彼の目線が腕を組んで歩くカップルを追っていた。
私の目線が手を繋いで歩く3人の家族を追っていた。
一歩一歩は早くて、公園はあっけないほど狭かった。
車のドアを開けるとき、やっと彼の目が潤んだ。
だけど、笑った。
最後にちょっとカッコつけたんだと思う。
別れ際思いきらないと、すがってしまう気がした。
そんな自分は好きになれなかった
私もカッコつけたかった
彼に見えてるうちは、なるべく振り返らないように楽しげに飛び跳ねるように歩いた。
階段を登り終わったあと、墓場の脇で柵につかまった。
もう終わり。寂しくて清々しい気持ちがした。
後ろに通行人が近づいてくる。
何事もなかったように歩きだすしかなかった。