キミと出会ったのは、私が小学生の時。
両親に何度もお願いして、お手伝いもたくさんして
ようやく会えたのがキミだった。
初めて会えた時は一目惚れしてすぐにキミに惚れ込んだ。
それから毎日ずっと一緒だったよね。
散歩も何度も一緒に行ったし、家族でドライブにも行ったね。
中学生になり、お母さんと何度も喧嘩した時はずっと泣いている私に寄り添ってくれたね。
高校生になって初めて彼氏を家に連れて来た時は、ずっと警戒していたね。嫉妬してくれていたのかな。
大学生になり、友達と外出する事が増えたけど、キミはいつも私の部屋で待っていてくれたね。
社会に出る時に一人暮らしをする事になった。
初めて家族と離れる私にキミはずっと玄関から動かなかったとお母さんから聞いたよ。
それから実家には年に数回しか帰れなくなって、
忙しいと自分に言い訳してた。
それからまた数年経ったある日
もう別れの時が近いと知って、慌てて実家に戻った。
最後に会った時よりも痩せて弱っていた。
ごめんねごめんね。
何度も何度も謝った。
もっと会いにくれば良かった。
もっと抱きしめてやれば良かった。
そっと頭や体を撫でて名前を呼ぶ。
浅い呼吸の中細く目を開け私の姿を見つけると
体をゆっくり起こし、私に寄り添ってくれた。
そのまま抱きしめて、大好きと伝える。
それに応えるかのように
小さく「クゥン」となき、ゆっくり呼吸が止まった。
初恋の人にまた一目惚れをした。
高校を卒業してから一度も会うことがなく上京したから、もう逢うことはないと思っていた。
同じクラスで過ごしたことはあったが、特別仲良かったわけではない。
勝手に好きになって、勝手にドキドキして、一人舞い上がっていた。
だけど、ある日仲良さそうに女の子と一緒にいるところをみて、勝手に失恋したと思い込んでいた。
そんな彼と同じ電車の中で出会った。
「久しぶり」
そう声をかけて目が合う。
一瞬の間、目が合い、それからすぐ目を細めた笑顔で
「久しぶり」と答えてくれた。
学生時代はあまり話した事がないなんて嘘だったかのように、たくさん話をした。
またあの時の恋心が再燃する。
近況報告をしあって連絡先を交換した。
電車から降りた後
「今度飲みにいこう!また連絡するわ」
「おう」
これがボクと彼の初恋の続きでありますように。
その人はいつも夜にならないと会えない。
週末の夜限定で、いつもの場所でバイクを停めてタバコを吸っている。
その姿がとても美しいと思ってしまった。
タバコを持つ指先や、バイクのそばでの立ち姿、すこし長い前髪、伏し目がちに話す薄い唇。
ひとつひとつが美しいと感じた。
バイクの後ろに乗り彼と真夜中を駆け抜ける。
後悔したと思った。
たった今ボクの口から放たれた言葉はもうどんなに足掻いても元には戻ってきてはくれない。
「嬉しい」
顔を紅潮させ、俯きながら答える彼女はボクの好きな人ではない。
むしろ苦手なタイプだ。
いつも流行を追いかけて、似合わないメイクをして、誰とも区別のつかない髪型。
大人数の中で彼女を見つけることは困難なほどの量産型。
なぜ彼女に告白をしてしまったのか。
好きでもないのに。
死にたいと思った。
もう何もかもがいやになった。
少しでも状況を変えたくて
耐えてきたし、前向きに頑張ってきた。
折れそうな心を何度も鼓舞してきた。
でも、もういいかな。
もう疲れたんだ。
無理に笑いたくないし、満員電車で足踏まれても許したくない。
飛び降りたら一瞬かなとか、電車に飛び込もうかと色々考えた。
ある夜に聞いたラジオ番組。
リスナーからの失敗談を笑い話にしている内容だった。
同じような失敗を経験したことあるのに、すごく笑った。
自分の時は泣くほど落ち込んだのに、この人は笑い話に変えた。
たくさん笑って、涙が出るほど泣いて、
途中から泣きたいのか笑いたいのか分からないくらいぐちゃぐちゃになった。
しばらくして、顔を洗って窓を開けて外の空気が
優しく頬を撫でる。
大きく息を吸ってゆっくりはいた。
月に照らされた見慣れた風景はキラキラしていた。