嗚呼今年こそ、今年こそ三人で初日の出を拝みに行きたかったのに。
男の願い虚しく、また新年を布団の上で迎えてしまった。
目が覚めた時には身体はすっかり綺麗にされており、痛む腰と嗄れた喉を除けば……否、除かなくとも心の中はぽかぽかと温かな気持ちに満ち満ちている。
窓から射し込む柔らかな陽射しを、目を細めて暫し見つめていると、やおら障子が静かに開いた。
「おお、起きておったか」
昨晩は随分無理をさせてしまったからのう、と悪びれる様子もなく白髪の男は宣う。その後ろからひょこっと顔を覗かせた背の低い義息子はどこか心配そうにこちらを見守っている。
「……あーあ、今年も初日の出を見られなかったじゃねえか」
「来年こそは必ず見ましょう」
毎年言っているんだがな、それは。と思いつつも、三人で同じ時間を過ごせている幸せに、男は小さく微笑みを浮かべた。
今年こそ引越しして一人暮らしを始めたいなあと思っている。
そして年内に保護犬の預かりボランティアにも参加させて頂きたい所存。
今までのオタ活中心だった生活を見直し、保護活動へ重心をシフトさせていくぞ!
……口だけは一丁前なんだがなあ……
たくさんの目標とそれに伴うしんどさとが合わさっている。
抱負、よく出来た言葉だ。
負を抱くのだから。
昨年サボったツケが今年になってどかっと精算の時を迎えているようだ。
ツケは払わなきゃなあ、推しの台詞が今は耳に痛い。
そんな新年の幕開けである。
さてはて一つずつこなしていこう。
年の瀬の任務を慌ただしく遂行し、無事に今年も除夜の鐘を聞くことができた。
最近は任務が重なり、逢瀬……いや、決闘も叶わなかったから、久々に果たし状を持って行った時のアイツの顔は見物だったな。
「こんなもの持ってこなくても、普通に会いに来てくれて良いんだよ?」
はにかみつつ、どこか嬉しそうな口ぶりのあの男が存外可愛……くはない、年内に貴様を倒してやる。
果たして勝負の行方はお察しだったが、せめて年の瀬の挨拶ぐらいはできたかもしれない。
今年はオタ活にほぼ全振りした1年だったように思う。
引越しは出来なかったが、その下準備に着手できただけでも良しとせねば。
来年はオタ活から保護活動へと少しづつシフトしていく予定。
やりたいこととやらねばならないことが次々湧いてくるのはきっと幸せなことなのだろう。
周りの人に感謝、今生きていられることに感謝。
ああ、そうだ。
今年は最愛の娘、ガチャ子を失った年でもある。
別れがあれば出会いもきっとあると信じ、ひたすら前へ前へと進んでいこう。
そんなこんなで皆様どうぞ良いお年を。