まにこ

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12/15/2024, 10:28:57 PM

あなたが来るのをひたすら待ち続けていた。
そうこうしているうちに、街には煌びやかな彩りが添えられる季節になってしまった。
どことなく浮き足立つ人々の群れ。
何だか私まで釣られてしまいそう。
だけれどもまだダメだ。今年こそあなたに出会えるまで空を見上げ続ける。
サンタさんにお願いしたらプレゼントしてくれるかしら。

12/14/2024, 9:34:26 PM

宝箱の中身を全てひっくり返したような夜空が広がっている。
ここは日本で一番星が美しく見られる場所と聞いてやって来たのだが、その情報に嘘はなかった。
本当なら隣にいた人間の分までその美しさを丸ごと堪能してやろうと思う。
瞳から零れるしずくの意味は、きっと満天の星空に心を震わされたからに違いない。
……そうでなければ他に何があるというのだ。
さっきまでくっきりと見えていた星たちが滲んでしまう、嗚呼勿体ない勿体ない。
私は目を擦ってその夜空を瞼の裏にまで焼き付けようとするのだが、そうすればするほど鼻の奥がツンと痛む。
頬を涙が一筋伝う。
吐く息はどこまでも白く、それでいてどこまでも独りだった。

12/13/2024, 9:02:43 PM

アッサムの程よい香りが鼻腔を擽る。
ティーポットから注がれる琥珀色のそれを見ている時間が至福の時だ。
「はい、どうぞ」
今日もあなたに愛を注ぐ。
嬉しそうにカップに口を付けるあなたを見て、私も紅茶をいただく。
ティーカップには魔法の薬。
少しずつ、少しずつ愛を滲ませていくの。
大丈夫、その時は私も共に逝くからね。

12/13/2024, 12:42:40 AM

身体だけでもと思い、半ば無理矢理暴いた。
それでもやっぱり欲が出る。
願わくばもう一度心の繋がりが欲しい。
今までの関係に戻れたらと無理な望みを託して、今日も今日とてあなたを暴く。

12/11/2024, 11:40:36 PM

空一面に鈍色が広がる。
枯葉が宙を舞い、身を切るような風が吹き抜けていく。
その時頬に温かい熱が押し付けられた。
「ほい、これ待たせたお詫びの缶コーヒー」
「……もう、びっくりした」
あなたにとってそれは何でもないただの謝罪なんだろう。
それが私にとって、どれほど嬉しいことかも知らずに。
耳に頬にぎゅっと熱が集まるのを感じる。
「じゃ、行こうか」
差し伸べてくれる手がどこまでもあったかい。
先程まで曇り一色だった空に光が差し込んでいく。

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