あじさいの花が咲いているよ
そういうことに気づくのはいつもきみの方だった。
自分はそんなきみの言葉を聞いてやっと季節の移ろいを感じるくらいには鈍感な自覚はあった。
「ね、あじさいの花ってどうして色違うか知ってる?」
それは流石にきいたことがあったから頷きを返す。
「たしか、土によるんだよな。アルカリと酸…?」
さすがに知ってたかぁ、
なんて、うろ覚えの知識にすら笑ってくれる。
じゃあ、あじさいの花言葉は?さすがにこれは知らないでしょ
【思いついたら地味に続けていきます!】
2024.6.15追記
「紫陽花の花言葉…」
「わからないんでしょー?教えてあげよっか?」
楽しげに言うきみの表情があまりにも訊いて訊いてって語るから思わずニヤける口元に手を当てて隠す。
「移り気、浮気、冷淡…は聞いたことある」
そのまま昔何かで知った知識を引っ張り出すと、そういう捻くれたの覚えてるのきみっぽいよね!と無邪気に笑われた。
悪気はないんだろうが、地味に傷つく。
「そういうのもあるけど、あじさいの花言葉はそれだけじゃないんだなー。知りたい?」
「後で調べるからいいよ」
ニヤける口元と思わず可愛いと思ってしまったことを誤魔化したくて、突き放すような言葉を吐いてしまう。
「じゃあ、いまから言う花言葉合ってるか調べてよ。私はきみに教えたい、きみは自分で調べたい。これならお互い嬉しいでしょ」
やりたいことってなんだろう。
なんとなく生きてきたからまだわからないね。
やらないといけないことがいっぱいいっぱいあるから、まだちょっとそれを考える余裕もないかも。
いつかやりたいことをみつけよう、
そのいつかが来ないまま今日まで生きてるから、
まぁ、そのうち?
永い長い目でいつかがくるのをまちながら死ぬまでにやりたいことみつけてみようかなー。
朝起きて、あー布団から出たくないな〜って思う。
それでもまぁまぁなんとか布団から出て、身支度整えて、ご飯食べて、と日々のルーティンこなしていく。
そういえば、と
今日の天気どうなんだろ、そう思って占い感覚でカーテン開けたとき、晴れていたら嬉しいけど、雨でもそれはそれ。
外にさえ出ればまぁなんとかなるの精神で今日もルーティンをこなすのだ。
世界は常に選択を迫ってくる。
それが嫌いだった。
だからいつも選ばないでいいように、誰かが選んだ残りを手にしてきた。
でもそれじゃあダメだと教えてくれた人がいた。
これはその人との出会いの話。
君がいた証の話だ。
『まぁた悩んでんのかよ~』
『だって選べない……選ばれなかったほうが可哀想だよ』
『あ~もうしっかたねぇな!よし、決めた!こっち、こっちはお前のな』
『え、』
『ちょうど欲しかったやつに似てんだよ、もう一個の方。だからさぁ、こっちがお前の』
『……いつもごめんね、ありがとう』
謝んなよ、
そう言っていつも笑っていたね。
それからも選べなくて困ってるたびに君が来て決めてくれたね。
ちょうど欲しかった
今日はこっちの気分だから
どーちーらーにしーよーかーな、かーみーさーまーのいうとおり!
はは、神さまの言うとおりなら仕方ねぇよな
選べなくて迷惑かけて謝るたびに君は謝るなと言ってくれた。
気にすんなよ、選ばないのがお前の優しさで強さだろうが
そんな事をいう君が眩しくて、心強くて、大好きだった。
月並みな言葉だけど、君はヒーローだった。
【落ち見失いました…】
書きたいこと。
君が僕に選択を強いる。
君を倒さないと世界はいずれ君が壊す
君か
世界か
下手な漫画みたいなことだなぁ、と何処か他人事に考えていた。
『お前が選べ』
―――――――――
やっと選んだか!
お前に倒されたくて頑張った甲斐があった!
豪快に笑う姿は記憶のままだった。
ねぇ、覚えてる?
あの日、逃げて逃げて逃げて逃げた先のあの日。
オレの邪魔ばかりしていたアイツに連れられて、今日もオレはまだ見ぬ天国か、地獄か、もしくはそれ以外への道を歩いている。
ただアイツと2人連れ立って歩いてるとはいえ、何か会話があるわけでもない。
だからだろうか。時折、夢を見るのだ。
そしてその夢をみるときは決まって「最悪」なことになるのだ。
夢を見る。夢の中にはオレとあの子がいる。
ねぇ、覚えてる?
それがあの子の口癖だった。
この道の先に何があるか確かめに行こうよって誘ったことだろうか。
それとも、あの日した約束のことだろうか。
それとも…、
思いつく限りを言葉にしてみる。
そのどれもにあの子はただただ笑ってその言葉を繰り返す。
ねぇ、覚えてる?
ごめん、ごめん……
実はもう君の「声」を思い出せないんだ。
まだ笑顔は覚えてる。
口癖も、交わした約束も、思い出は全部全部。
あの子はどんな声でその口癖を話していたのだろうか。
あの子はどんな笑い声を上げていただろうか。
あの子はどんな声で、約束を、交わしただろうか……
ねぇ、覚えてる?
覚えてない…もう何もかもわからない。わからないんだ。
ふと懐かしい香りがした気がして……
そこで夢は終わる。
心配そうなアイツに「夢を見た」そう告げて終わるはずの夢。
ただ今日はいつもと違った。
アイツが珍しく話したからだ。
「夢の続きだ」
それはオレの知らないあの子とアイツの話。
どうしてアイツがオレといるかの話。
――――――――――――――――――――――
あの子はいつも誰かとの思い出を話していたらしい。
アイツはそれを聞いていた。
「昔の話よ、ねぇ、貴方忘れてしまった?」
「昔々にした話。世界の終わりの話」
「貴方としたの、もしもの話」
「もしも、世界の終わりが来たら私は貴方と旅に出たいの。そうね、うんと壮大な御伽噺みたいなのがいいわ」
「私はね、貴方と旅に出るの。終わりのない道が続くのよ」
「私は貴方に誘われたいわ。何よ、一度くらいお姫様みたいなことしたいじゃない」
「貴方が誘うのよ、いい?絶対の絶対よ」
「そう、それで貴方が私を誘って、私は承諾するの。パパとママには内緒。そう二人きりの大冒険」
「二人きりで終わりのない道を歩いて歩いて歩いて、そして」
ねぇ、貴方。
覚えてるでしょう?
忘れてないでしょう?
私はね、貴方と旅に出たいの。
人生最期の旅よ。
でもね、貴方。
私は、貴方を縛りたかったわけじゃないのよ。
私もずっと見ていたわ。
誰かに降りかかる雨から助けようとしたのも
また明日を言えるような誰かと出会ったのも
全部見てたの。
全部見てたから気づいちゃったの。
貴方、私の声忘れちゃったでしょう?
だからきっともう私の声は届かないから。
ねぇ、この声が届く誰か。
誰でもいいの。
どれだけ時間がかかってもいいの。
いつか、いつの日か。
あの人の世界が終わる日に隣にいてあげてね。
意地っ張りで頑固なあの人が逃げても諦めないで。
そして二人で旅をしてね。私本当に楽しかったのよ。
そうだ!どうせなら1つだけ賭けをしない?
私実はこういうのやってみたかったの。
賭けの内容は、そうね。
「二人の旅の終わりの日に私の話をするかどうか」
この声が届く誰か、貴方はどちらに賭けるのか、そもそも賭けに乗ってくれるかもわからないけど。
私はしてくれるにかけようかなぁ。
私が勝ったら、そうね…、
『 』
ふふっ、どうかしら?
ねぇ、憶えていてね。約束よ。
―――――――――――――――――――――
賭けはあの子の勝ちだそうだ。
だからアイツはオレを見て。そして。
旅の終着点、夢の終わりを告げたのだ。
―――――――――――――――――――――
夢を見ていた。
長い永い夢だ。
逃げて逃げて逃げて逃げた先のあの日
今度こそと覚悟を決めたあの日。
アイツとした、天国か、地獄か、それ以外かに続く
終わりのない道の先の二人旅の未知の先。
最期の旅の終わりは至極呆気なかった。
あの子の夢の話をしたからか、それともアイツの気が変わったのか。
オレの世界の終わりに続くはずだった道の先。
行き先はどうやらまだ天国でも地獄でもない、どこからしい。
なぁ、君。
あの日オレの世界の終わりを邪魔した君。
約束をしよう。
君なら覚えていてくれるだろう?
いつかオレの世界の終わりが来たら君が迎えに来てくれよ
今度こそ君の声思い出すから。
そしたら君の声でまた聞かせてほしい。
『ねぇ、覚えてる?』
【オチを見失ったのでここまで】