『どこにも書けないこと』
あなたとは
勝手に両思いか何かかと
思っていました。
でも、それがそうではないと知ったとき、
好きでもない人にあそこまで優しくできてしまう
あなたの芯からの優しさに気づいて
また好きになってしまいそうでした。
もしあなたに見る目がなければ、
私がもっと素敵な人間であれば、
そんなことばかり考えては
涙も出ないまま後悔だけが募っていく。
そんな夜は、もう何度目かわかりません。
本当はあなたの幸せを願いたいけれど、
私じゃない誰かと紡ぐ幸せが
私には醜いものにしか見えないのが
本当に嫌。
『ブランコ』
ぎい、と音を立てた。私とあなた、ブランコに2人。
どうぞ、と手渡されたのは、缶ビール。
「悩み聞くよ」
それは、あなたに好きな人がいると知ったとき。うっかりしてしまって、失恋したと言ってしまった。そうしたら、あなたは当たり前のように私を連れ出してくれた。だから私は、あなたが好きだ。いや──好きだった。
「わたしね、わたしね、ずっと好きだったんだよ」
そうだね、と微笑む声。知らないくせに。もう駄目なのに、まだあなたに縋り付くしかない哀れな私を、嘲笑くらいしてくれたらいいのに。
不意にあなたは、ブランコを漕ぎ始めた。
「俺もね、本当は失恋した」
首を傾げると、
「好きな人に、そんな好きな人がいるの、知らなかった」
『街へ』
そこは、私たちの住んでいる場所より少しだけ都会。
だから、私たちの知らない遊びもあるみたい。
「次あそこで遊ぼうよ!」
目を輝かせているあなたに手を引かれて、私も走り出す。
「楽しそうでよかった!」
私は思わず首を振ってしまいそうになった。
この街の遊びが楽しいのではなくて、楽しんでいるあなたがどうしようもないくらいに愛おしいだけ。
『君に会いたくて』
君の最寄り駅に降り立つと、どうしても辺りを見渡してしまう。いつもと変わらない風景。少し寂れていて、けれど私の最寄り駅よりは栄えている。不思議な感じ。
私はこの駅が好き。まるで君みたいだから。ほんの少しばかりの憂いを帯びた目と、それを塗り替えてしまうような底抜けの明るさが、私には眩しい。
「あれ」
君の声がした。不思議そうに首を傾げて近づいてくる。
「今日なんか用事あるの?」
私はその一言が言えなくて、
「友達待ってるの」
だけが零れ落ちる。今は、間違いじゃないのかもしれない。でも、いつかは間違いになってしまう。そうか、なんて笑ってる君には、伝えられない。
私は君に会いたくてここにいるのに、なんて。
『ずっとこのまま』
「──そんでさぁ、勇気出して誘ってみたんだけど、断られちゃってさぁ……これって脈ナシ!?」
「えー……脈アリだと思うけどなあ」
「だよねぇ!?今回たまたま予定あっただけだよね!?」
「多分ね」
彼は、1歩を踏み出している。けれど、私は立ち止まったまま。むしろ、彼の服の裾を掴んでいるような気がする。
あなたがその人のもとに行ったら、あなたはきっともう戻ってこないでしょ。
私のこの思いをあなたに伝えたら、あなたはきっともう戻ってこないでしょ。
それくらいなら、私はずっとあなたとその人の話を聞いてやる。
そうすればきっと、ずっとこのまま一緒にいれるから。