『君と見た景色』
それは、教室の窓で切り取られた空。
夕日が傾いて、僅かに暗い教室。
それは、昇降口で見た夜空。
星は瞬き、暗闇でも明るい君。
それは、帰り道を包んだ寒空。
私の涙さえ包み込んだ君の温もり。
──それは、駅前の自販機。
暗闇の向こうで、「またね」という君の声。
『魔法』
もし、魔法があったら。
きっと願いを全て叶えてもらうだろう。
やりたいこと、全部やるだろう。
何か、欠けている気がする。
そうだ、「できない」という悔しさ。
「やってやる」という意気込み。
生きがい。
それは、私だけの生きている証。
もし、魔法があったら。
魔法がない世界に変えてしまうだろう。
『誰も知らない秘密』
ずうっとあなたを見てるってこと。
恋か、狂気か、わからないけどね。
『やさしい嘘』
「ねえ、私のこと好き?」
「………ううん、もう、好きじゃない」
「そっか、………ねえ──」
「ばいばい」
あなたを傷つけないための嘘。
でも本当は、いちばん傷つける嘘。
やさしい嘘なんて、ない。誰も、得をしない。
だから、自分だけが損をしようとする。
それがいちばん、やさしくない。
『未来への鍵』
年が明けてすぐ、友達が鉛筆をプレゼントしてくれた。理由がわからず首を傾げると、その人はこう言った。
「もうすぐ共テでしょ。」
大学受験は、まさに自分の人生を、運命を決める戦いだ──これは、高校生にとって最後の戦争なのだ。命を燃やせるほど物騒な世の中ではないけれど、確実に、命を削ってでも、自分の青春をビリビリに引き裂いてでも欲しいその未来を目指している。この戦争の準備には、あらゆる武器が使える。だけど、戦が始まれば、私たちの武器は自分と鉛筆だけになる。そりゃあ、不安だ。
しかし、なるほど、と思った。私は今、この鉛筆を『武器』と言ったが、この人にとっては武器などではなく、『未来への鍵』なのだろう。この鍵をしっかり持って、しっかり鍵穴に入れて、しっかり鍵を回せば、未来の扉は開く。そうやって、私たちは夢見る未来を実現させる。
「頑張ろうね。」
「うん、もちろん。」
私たちは強くグータッチをした。とても痛かったけれど、これも、もう二度と得られない青春なのだろう。不思議と、寂しくはない。世の中は、全て未来への鍵でできている。