千歳緑

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4/2/2026, 1:55:34 PM

大切なもの



 大切だった。
 だから、鍵をかけた。

 檻は逃げ出さないようにではなく、
 外側から傷付けられないようにだった。



 大切だった。
 だから、高い場所に置いた。

 見上げればそこにいる、
 女神のような存在にするために。


 
 大切だった。
 だから、歩けないようにした。

 わかりやすい『弱さ』を与え、
 誰かが手を差し伸べてくれるように。



 全て、嘘だ。



 どこにも行って欲しくなかった。
 お前がいなくなったら、壊れてしまう。
 一番大切だったのは、自分の心だけ。
 お前自身はどうでもいいのさ。
 


 お前自身は……。





 大切だった。
 だから、恨まない。

 これだけは、本心だ。





 空っぽの檻の中、腹部を刺された男は血を流し、やがて息絶えた。

 

 





4/1/2026, 1:01:07 PM

エイプリルフール



 お前に逢えて良かった。

 お前がいるから生きていける。

 生き方を教えてくれた。

 嫌いだった春もお前がいるから悪くないって思える。
 
 憂鬱な時は支えてくれる。

 死にそうに辛い時も寝て起きたらお前がいるって思ったら起きられる。

 ただ歳を重ねるだけだったのに来年はどうしようこうしようって予定たてて生活していくのが楽しい。

 お前がいないと生きていけないってドラマみたいな陳腐な台詞だけど実感した。

 いない世界なんて考えられないだから長生きして健康でいて外に出たら可愛い夫婦だねって言われるじいちゃんばあちゃんみたいになりたいです。



…さて、今日はエイプリルフールですがここで問題です。
 俺はどこで嘘をついたでしょうか?





「最後の一文」

 嫁は顔色一つ変えずに正解を言った。

3/31/2026, 2:31:38 PM

幸せに


 物語の主人公は貴方
 貴方の幸せを心から願っている



 だから



 ガラスの靴は壊しましょう
 寝ている狼は起こしてしまおう
 魔法使いは裏切って
 鬼は意地悪じいさんの用心棒
 お供の三匹は途中退場

 ぼろぼろになって
 傷ついて泣きじゃくって
 でも死ぬ事は許さない
 物語が終わってしまうから

 困難のない物語なんてあると思う?
 黙って立っているだけで
 『幸せ』になれるなんて
 本気で思っている?


 都合の良い幸運だけで解決する主人公なんて
 お呼びじゃないの

 不運 敗北 挫折 訣別 失望

 苦しんで苦しんで
 足掻いて
 もがいて
 のたうち回って





 立ち上がる瞬間を私達に見せて





 『幸せ』になりたいなら
 血反吐を吐いて掴みとりなさい

 

3/30/2026, 1:27:57 PM

何気ないふり



 いや、ムリ。

 何気ないふりとかムリ。

 今更キョーミないです、ってふりとかできない。

 そもそも俺ぁ嘘やカケヒキ?みたいなのが苦手で
 押して押して押しまくってようやくあの人と付き合えたんだ。
 
 結婚したい。だから指輪もストレートで渡す。



 いや、拒否されるのはわかってる。 

 そもそもあの人は結婚願望ないし。

 初めて会った学生時代から闘病してたから、未来に夢も持てないって、何度も言われた。
 
 遺伝的な事も怖いから、子どもも欲しくないって。

 だから何回もフラれた。その度に『付き合ってください』って繰り返した。

 だって。

 本当は着てみたいんだよ、あの人。
 ウェディングドレス。

 貸した漫画や、いつも見ている雑誌。テレビCM。広告掲示板。
 キョーミないふりして、いつも食いついてた。

 でもそれは病気の自分には叶わないって諦めてる。
 結婚も子どもも責任持てないからって。
 未来がない、からって。

 きっと、そう。
 花嫁さんになりたいって、今どき古臭くて可愛らしい夢を持てないでいる。



 ふざけんな。
 あと一年、あと一日、あと一時間、あと一分。

 一秒先を生きてる人が、夢を持てない道理があるか。
 


 俺は貴女と結婚したい。
 戸籍入れて、できれば子どもも欲しいし、育ててみせる。
 ドレス写真だけとか、中途半端な事はしない。
 拒否されたって何回でもプロポーズする。

 こんなバカな俺だけど、貴女の夢を叶えるヒーローになりたいです。

 

 明日終わるかもしれない一生を、俺にください。

3/29/2026, 1:17:31 PM

ハッピーエンド



 お前が嫌いだ。

 ガサツで、不真面目で、責任感がなくて、嫌いだ。

 お前みたいな奴が勇者に選ばれるなんて
 理解できない。



 言葉はいつもチャランポラン。
 任務や依頼は不成功。
 全て一人でやろうとするから、仲間意識がない。

 腹が立つ。むかつく。

 この世界に、お前みたいな奴がいる事が。



 敵はいつも、人間だった。
 魔物なんて、倒して終わり。
 ケチをつけて報酬を出し惜しむ事も
 己の悪事を他者に押し付けて私達に殺させる事も
 強さゆえに化け物扱いして石を投げる事もない。

 人間は救いようがない。

『真面目にやるだけバカみるよ。一息つけよ』
『俺が助けたいから、助けるだけ』
『化け物でいいじゃん』

 お前はそう言っていた。
 守る価値がない人間すら助けて。
 私達に手を汚させないよう、独りで戦って。
 騙されて、憎まれて、否定されて。

 それでも、戦う。
 お前も救いようがない、お人好しだ。





 独りにさせて、たまるか。



 お前を勇者にしてたまるか。
 魔王と戦い命を散らす運命なぞ
 認めてたまるか。

 

 認めない。
 お前の死ぬハッピーエンドなんて。



 私がこの手で変えてやる。

 
 

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