萌葱

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12/29/2022, 2:22:38 PM

「みかんってさ、家族で食べるものじゃない?」
伏し目がちにみかんの皮を剥きながら、彼女はそう言った。
「…そうかな?」
「そういうイメージがある」
僕の曖昧な返事に、彼女はみかんを剥き続けながら答えた。
「こたつに入ってさ、このみかん酸っぱいねーとかこっちは甘いよーとか言ってさ、…食べてたなぁ昔。冬になるといつもこたつの上に置かれてあったし」
…たしかにそう言われてみれば、そんな思い出もあるような気がする。僕が昔の事を思い出していると、
彼女は剥き終えたみかんを一房口に放り込んでいた。
「うわ、酸っぱい」
大袈裟に顔をしかめて言うもんだから、思わず笑ってしまった。
「ね、そっちのみかんも酸っぱいの?」
彼女は僕が食べていたみかんに視線を移してそう尋ねた。
「ううん、こっちのは甘い」
そう答えると、なんだか彼女は照れたように笑った。

12/27/2022, 11:29:15 AM

彼は手ぶくろをわざわざ外して、
「ん」
と私に片手を差し出した。彼の頬は真っ赤に染まっている。赤いのは、寒さのせいだけじゃないのかも。
私が手を差し出すと、彼はするりと指を絡ませ、「早く行こう」とばかりに手をひいて歩き出した。
寒がりの彼が、手ぶくろを外してまで手を繋いでくれるなんて。
やった、手ぶくろに勝った。
なんだかとても嬉しくなって、私はぎゅっと手を強く握り返した。

12/27/2022, 6:05:51 AM

変わらないものなんてない。
そんなのは分かっている。
だけど面影は、少しだけでも残していて欲しいな