萌葱

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「みかんってさ、家族で食べるものじゃない?」
伏し目がちにみかんの皮を剥きながら、彼女はそう言った。
「…そうかな?」
「そういうイメージがある」
僕の曖昧な返事に、彼女はみかんを剥き続けながら答えた。
「こたつに入ってさ、このみかん酸っぱいねーとかこっちは甘いよーとか言ってさ、…食べてたなぁ昔。冬になるといつもこたつの上に置かれてあったし」
…たしかにそう言われてみれば、そんな思い出もあるような気がする。僕が昔の事を思い出していると、
彼女は剥き終えたみかんを一房口に放り込んでいた。
「うわ、酸っぱい」
大袈裟に顔をしかめて言うもんだから、思わず笑ってしまった。
「ね、そっちのみかんも酸っぱいの?」
彼女は僕が食べていたみかんに視線を移してそう尋ねた。
「ううん、こっちのは甘い」
そう答えると、なんだか彼女は照れたように笑った。

12/29/2022, 2:22:38 PM