龍那

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4/10/2023, 12:02:12 AM

[誰よりも、ずっと]

 
 誰よりもずっと見てきた。
 動くものも、動かないものも。
 移ろうものも、停滞したものも。
 時に見守り、時に手を貸し。
 人が来て。去っても。
 ずっと見てきた。
 
 だから、誰よりも分かっている。
 誰よりも思っている。

 この世界、そろそろ終わらせないと。

4/8/2023, 10:57:38 AM

[これからも、ずっと]

 これからも、ずっとこのままだと思っていた。
 眠る君の髪に触れて。
 白い頬と。長いまつ毛と。規則正しく上下する胸と。
 耳を澄まさないと分からないほど、ささやかな呼吸を聴いて。
 ずっと、このままでいて欲しいと思っている。

 なのに。
 どうしていつも目を覚ましてしまうの。
 君の時間は、もう残り少ないのに。
 だから、何度も魔法をかけてるのに。
 君はそれを打ち破ってしまうの。
 
「これからも、ずっと。あなたと話をしたいから」
 
 君はそう言ったけど。
 私と君じゃあ、寿命が違いすぎるのよ。

4/7/2023, 10:24:30 AM

[沈む夕日]

 沈む夕日が、広場を照らしている。
 遊具はない。誰もいない。
 ただ、左側に小さな舞台がある広場。
 そんな、淋しくも温かみのある絵は、音楽室の隅にひっそりと飾ってあった。

 誰も居ないと思っていた舞台の影に、小さな人影があると気付いたのはいつだったか忘れたけど。ピアノの練習をする僕を見てくれているような気がして、少し嬉しかったのを覚えている。

 放課後。夕陽に照らされた音楽室で、僕はピアノの練習をする。
 たったひとりの小さな観客に、僕の拙い音はどう聞こえているのだろう。
 分からないけど、いつまでも沈まない夕日は、僕の音を静かに受け止めてくれた。

「今日も聴いてくれてありがとうね」
 僕は、絵にお礼を言って帰り支度をする。
 外はすっかり暗かったけど。いつの間にか舞台の端に座ってこっちを見ている少年は、今日も暖かな夕日に照らされていた。

 なんだか絵の淋しさが減った気がする。
 それが僕のピアノの影響なら、ちょっと嬉しい。

4/6/2023, 11:18:21 AM

[君の目を見つめると]

 君の目を見つめると、何を言いたいのかなんとなくわかる。
 眠いとか。お腹空いたとか。
 暇だとか。嬉しいとか。悲しいとか。
 でも。今だけはその感情が読めなかった。
「なんで、なんで分かってくれないの……?」
 目に涙を溜めて、頬を染めて。
「なんでって……」
 分からない。何も。目に感情があるのは分かるのに。
 そのパターンは。
 何度読み込んでも、エラーが返ってくるのだ。

4/5/2023, 1:44:34 PM

[星空の下で]

 夜の屋上。
 僕はど真ん中に寝転がって空を見ていた。
 吐く息が白い。背中は冷たい。でも、空の星はとても綺麗だ。
 満点の星空はチラチラと瞬いて、今にも降ってきそう。

 最高の星空だ。
 これを誰かと共有できたら。この中に埋もれている星座の話とかできたら。
「楽しそうなんだけど。なあ」

 僕の他に生体反応がないこの街で、それはちょっと叶わない。
 ああ、残念。

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